両リーグで首位打者なら史上初!
ヤンキースが7年ぶりの地区優勝に突き進んでいる。現時点で2位以下に10ゲーム以上のセーフティーリードを保ち、見据えるのは10年ぶりの世界一だけだ。
現地時間8月31日の試合では、苦手なアスレチックスを相手に延長11回サヨナラ勝利を収めた。そこで殊勲のサヨナラ本塁打を放ったのが、移籍1年目のDJ・ラメーヒューである。
ラメーヒューは昨季までロッキーズでプレーしていた31歳の内野手。おととし・昨年と2年連続でゴールドグラブ賞に輝いている守備の名手であり、2015年と2017年にはオールスターに選出された経験もある名プレーヤーであるのだが、いかんせん本塁打全盛のいまのメジャーでは比較的地味な存在といえるだろう。
昨季は4年ぶりに打率3割を切り、オフにFAとなったものの、なかなか移籍先は決まらず。年が明けた1月にようやくヤンキースと2年契約を結んだが、当初はユーティリティーな内野のバックアップ要員の一人という見方が多かった。実際に開幕戦では出場機会すらなく、初めてスタメンで起用された開幕2戦目も「9番・三塁」。その期待値があまり高くなかったことがわかる。
両リーグで首位打者なら史上初!
それでも、故障者が続出するチームのなかで打撃・守備の両面でしっかり結果を残し、実力でレギュラーに定着。二塁を中心に一塁・三塁も守ることができ、その貢献度はチームでも屈指だ。
気が付けば本塁打数もすでに自己最多の15本を大きく更新する24本をマーク。打率も現在.333で堂々のア・リーグ1位と、今では“隠れMVP候補”にも名前が挙がるほどの大活躍を見せている。
実は、ロッキーズ時代の2016年にも首位打者を獲得しているラメーヒュー。もしア・ナ両リーグで首位打者に輝けば、メジャー史上初の快挙となる。
過去に首位打者を複数回獲得している選手は少なくない。2000年以降だけでもバリー・ボンズ(2度)にイチロー(2度)、ジョー・マウアー(3度)、ミゲル・カブレラ(4度)、ホセ・アルトゥーベ(3度)と5人もいるが、彼らはいずれも同じチームでの達成だ。移籍が多いメジャーだが、首位打者を獲得するレベルの選手はそもそも移籍が少ないということだろうか。
ちなみに、メジャーに比べて圧倒的に移籍が少ない日本のプロ野球では、江藤慎一(中日・ロッテ)と内川聖一(横浜・ソフトバンク)の2人が両リーグで首位打者に輝いている。
ユーティリティープレーヤーから一躍MVP候補へと駆け上がった男は、名門ヤンキースでの1年目に史上初の快挙を達成することができるのか。ラメーヒューの活躍に注目だ。
(※成績はすべて現地8月31日終了時点)
文=八木遊(やぎ・ゆう)