ソフトバンクが優位?
パ・リーグの優勝争いは近年まれに見る大混戦になっている。西武にマジック「8」が点灯しているものの、残りの試合数も「8」で両者の差は1ゲームと、最後までもつれそうな状況だ。
両チームの残り試合を対戦チーム別に見ると、ソフトバンクが残り9試合中オリックスと5試合、日本ハムと楽天とそれぞれ2試合ある。一方の西武は、残り8試合中5試合がCS(クライマックスシリーズ)進出を争っており、今季は昨季から一転して相性の良くない楽天との対戦。残りはロッテ、オリックス、日本ハムと1試合ずつ。CS進出が絶望的なオリックスと5試合を残しているソフトバンクがやや有利なようにも見える。
そのパ・リーグの最優秀選手(MVP)の行方は、ペナントレースの行方に左右されそうだ。セ・リーグと同じく、パ・リーグの過去10年を見ても、2014年を除き優勝チームからMVPが選出されている。唯一の例外は2014年で、2位だったオリックスの金子弌大(現日本ハム)が16勝5敗、防御率1.98という成績を残し、沢村賞と共に受賞している。
▼ パ過去10年の歴代MVP
18年:山川穂高(西武)☆
17年:サファテ(ソフトバンク)☆
16年:大谷翔平(日本ハム)☆
15年:柳田悠岐(ソフトバンク)☆
14年:金子千尋(オリックス)※ソフトバンク
13年:田中将大(楽天)☆
12年:吉川光夫(日本ハム)☆
11年:内川聖一(ソフトバンク)☆
10年:和田 毅(ソフトバンク)☆
09年:ダルビッシュ有(日本ハム)☆
☆=優勝チームからの選出
※=その年の優勝チーム
西武なら森、ソフトバンクは千賀の一択?
今季のMVPに関しては、西武が優勝すれば捕手の森友哉が最有力だろう。森は現在(※9月16日終了時点)、打率.339でパ・リーグの首位打者で、22本塁打、101打点。何と言っても得点圏打率が「.415」と勝負強さも光る。
仮に首位打者に輝けば、捕手としては1965年の野村克也(南海)、1991年の古田敦也(ヤクルト)、そして2012年の阿部慎之助(巨人)に続く、史上4人目の快挙。いずれも通算2000安打を記録している球界のレジェンドたちだ。
西武から名前を挙げるとすれば、2年連続本塁打王が濃厚な山川穂高、終盤戦でチームを支え、リーグトップの120打点を記録している中村剛也あたりか。もちろん、シーズンを通して救援陣を支えた増田達至らの貢献も大きい。山川は昨季に比べると調子の波が激しく、印象はイマイチ。中村も終盤戦のインパクトは大きいが、シーズンを通した貢献度では森に軍配が上がりそうだ。
一方でソフトバンクが優勝した場合は、千賀滉大の一択か。撃ち込まれた試合もあったが、今月12日には西武との首位攻防戦に先発し、8回を1失点に抑える好投でチームに勝利を呼び込んだ。さらに6日のロッテ戦では育成ドラフト出身の選手として初めてのノーヒットノーランを達成。現在、パ・リーグは規定投球回数到達者が僅か3人という先発投手苦難のシーズンにありながら、両リーグトップの168回1/3を投げている点も評価できる。
やはり西武優勝なら森が最有力。ソフトバンク優勝なら千賀か――。どちらにしても、ペナントレースの行方がMVP争いにも直結することは間違いないだろう。
▼ パMVP候補の成績
<西武>
・森 友哉:128試合、打率.339、22本塁打、101打点
・山川穂高:135試合、打率.254、42本塁打、115打点
・中村剛也:128試合、打率.296、29本塁打、120打点
・増田達至: 61試合、3勝1敗29セーブ、防御率1.78
<ソフトバンク>
・千賀滉大:24試合、13勝7敗、防御率2.83、214奪三振
文=八木遊(やぎ・ゆう)