この10年で達成者なし
現地時間12日に幕を開けたア・リーグ優勝決定シリーズは、敵地に乗り込んだヤンキースが第1戦に快勝。2年ぶりの世界一を目指すアストロズにとって、第2戦は絶対に落とせない一戦となる。
そのアストロズが第2戦の先発マウンドに送り込むのが、メジャーを代表する剛腕のひとりであるジャスティン・バーランダー(36歳)。ヤンキースのCCサバシアが今季限りで引退を表明しているため、来季からは“現役最多勝投手”ということになる。
バーランダーは2005年・22歳の時にタイガースでデビューして以降、15シーズンで通算225勝を挙げている。新人王やサイヤング賞、MVPなどいくつもの賞を獲得してきたが、大投手の証「通算300勝」というのも、もちろん視界に入っている。
先発投手は100球をめどに降板する現代野球において、完投数は激減。先発投手が白星を手にするには、打線の援護やリリーフ陣のパフォーマンスにも依存するため、300勝投手は絶滅危惧種となりつつある。実際、2009年にランディ・ジョンソンが達成して以降はこの10年間でひとりも生まれていない。
来季で37歳、あと「75勝」
300勝まで、残り「75勝」が必要なバーランダー。36歳で迎えた今季は自身2度目の20勝超えを記録するなど、衰える気配は全くない。むしろ、2年前にタイガースからアストロズに移籍して以降、さらに勝ち星のペースを伸ばしている。
とはいえ、年齢はすでに36歳。来季開幕時は37歳である。仮に、来季から毎シーズン15勝を挙げれば41歳のシーズンに300勝に手が届く。年齢による衰えを考えて、少なめに見積もってシーズン12勝なら、43歳のシーズンに300勝に届くことになる。どちらにしても、40歳を過ぎてもなお、何度かシーズン2ケタ勝利を記録する必要があるということだ。
過去、37歳シーズン以降に75勝以上挙げた投手というと、メジャー史上26人だけ。最多はフィル・ニエクロで173勝。次いで151勝のジェイミー・モイヤー、139勝のウォーレン・スパーンと、バーランダーが300勝に必要な75勝をはるかに上回る勝利数を挙げた投手もいる。
ちなみに、2000年以降に引退した投手だと、モイヤー以外にランディ・ジョンソン(124勝)やロジャー・クレメンス(107勝)、デビッド・ウェルズ(98勝)、バートロ・コロン(94勝)、ケニー・ロジャース(87勝)、ティム・ウェイクフィールド(84勝)、グレグ・マダックス(82勝)、R.A.ディッキー(79勝)が37歳シーズン以降に75勝以上挙げている。
しかし、このうち300勝投手はジョンソン、クレメンス、マダックスの3人だけだ。果たして、バーランダーはジョンソン以来の300勝投手になることはできるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)