コラム 2019.10.24. 19:00

楽天・今江年晶 日本シリーズ男が迎えた最後の秋【短期連載:去りゆく勇者たち】

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楽天・今江

短期連載:去りゆく勇者たち


 秋は野球界にとって別れの季節でもある。自ら現役引退を告げる者、球団から戦力外通告を受ける者。新陳代謝が激しく、弱肉強食が常である勝負の世界では避けて通れない非情の時だ。

 彼らはチームに何を残し、あるいは、どんな悔いを残してユニホームを脱いでいくのか? 勇者たちの散り際を追ってみる。


第4回:楽天・今江年晶


 悔いがない、と言ったらウソになる。今月18日、楽天の今江年晶が18年に及ぶ現役生活に別れを告げた。36歳。打撃や守備の衰えというより目の故障(右眼球の網膜炎)で現役生活を断念せざるを得なくなった。

 「体は元気だったけど、不安もあったし年齢のこともあった」。マイクに向かう今江の声が涙で震えた。

 ロッテからFAで楽天に移って4年。不本意な成績が続いた。ロッテ時代からの古傷である左大腿筋膜炎に、2017年には一塁守備で打者走者と交錯して左尺骨骨折、前年には死球を受けて左手の骨折も経験している。

 翌18年には4年ぶりに規定打席に到達、打率.276、10本塁打の好成績を上げたが、オフの契約交渉では3年契約の過去2年が不成績という理由で2億円の年俸は減額制限を超す大幅減俸で5000万円に。復活を誓った今季も目の疾患で大半の生活をファームで過ごすしかなかった。本人はそれでも現役続行の希望を持っていたが、GM・石井一久の下でチームは若返りに舵を切る。

 昨年までの正捕手で将来の幹部候補生と言われる嶋基宏さえ、他球団への移籍を選択する。今江に現役で残る道はなかった。


ミスター“シリーズ男”


 日本シリーズの季節になると、今江の名前は輝きを増す。何せ、ロッテ時代は「下剋上V」の立役者として2度のシリーズMVPに選出されている。

 2005年。この年から三塁の定位置を掴んだ若者が日本一の決定戦で超人的な働きを見せる。シーズン2位から勝ち上がってつかんだ阪神戦、勢いそのままに4連勝で一気に日本一に駆け上がった。今江は第1、2戦で何と8打席連続安打の離れ業をやってのける。今もシリーズ記録の活躍で文句なしのMVPだ。

 2010年はリーグ3位からシリーズに駒を進め、史上最大の下剋上でフィナーレを飾る。中日との激突は2試合連続で延長戦にもつれ込み、ロッテが第7戦を8対7で振りきる球史に残る結末となった。このシリーズでも今江は27打数12安打(打率.444)の大暴れで2度目のMVPに輝く。

 今江の球歴を調べていくと、大半のシーズンが故障で不本意な働きになるが、大舞台が用意されると勝負強い打撃が猛威を振るう。逆な見方をすれば今江が満足に働いた年はチームも光り輝くと言うわけだ。


来季以降はコーチとして


 いかつい風貌からついたニックネームは「ゴリ」。かつて、ロッテの監督がB.バレンタインだった時代に、指揮官から当時のヘッドコーチである西村徳文(現オリックス監督)に先発メンバーが告げられたが、バレンタインの「ゴリ」の名を、西村が「堀」と聞き間違えて三塁には堀幸一が出場したと言う笑い話が残る。

 そんなワイルドな容姿とは違い? 心根は優しい。若いころから社会貢献活動を続け、2015年にはプロ野球人の社会貢献活動を表彰する「ゴールデンスピリット賞」を受賞。楽天移籍後もこうした活動を続けていた。日本一の大舞台での活躍から相次ぐ故障による二軍生活まで。様々な経験は来季以降、楽天の育成コーチ就任が決まり、生かされることになる。

 「今後は若手とのコミュニケーションも勉強です」。涙の引退会見から4日ほどたった新たな人事発表の場では、次なる目標に目を向けた。これを機に「年晶」の名前を本名の「敏晃」に戻すという。心機一転の再出発である。

 前監督の平石洋介に次いでまた伝説のPL戦士が現役を退いていく。しかし、その勝負強い打撃で数々のドラマを生んだ今江伝説は生きている。あの下剋上シリーズと共に。

※この項終わり

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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