日本シリーズでも交流戦でもパがセを圧倒
日本シリーズを4連敗で終えた、巨人・原辰徳監督の「セ・リーグもDH制を使うべき」という提言が大きな注目を集めている。なかには「負け惜しみではないか」というようなことを伝えるメディアもあるが、純粋に実力差を感じての発言だったのではないだろうか。
ソフトバンクの圧勝により、日本シリーズはパ・リーグ球団が7連覇。2000年からの過去20年でパ・リーグ球団が14度の日本一を果たしており、圧倒的な強さを見せつけている。セ・リーグ球団の連覇となると、2001年のヤクルトに次いで巨人が日本一となった2002年までさかのぼらなければならない。
また、今シリーズでは日本シリーズにおける通算勝利数でもパ・リーグ球団が205勝202敗8分と58年ぶりに勝ち越したことも話題となった。交流戦でもパ・リーグがセ・リーグを圧倒していることはいまさらいうまでもない。2005年からはじまった交流戦だが、パ・リーグは今季で10年連続14度目の勝ち越し。セ・リーグが勝ち越したのは2009年のただ一度のみだ。
1985年以降の日本シリーズはパが110勝91敗3分
両リーグ間の実力差が開いた原因について、ドラフトにおけるパ・リーグ球団の攻めの姿勢やくじ運を挙げる声もあるが、原監督の発言を待つまでもなく、DH制にその原因があるという向きは強い。
パ・リーグでDH制が採用されたのは1975年。その10年後の1985年からは日本シリーズでもDH制が採用された。思えば、この頃は西武の全盛期。それこそパ・リーグがセ・リーグを日本シリーズで圧倒しはじめた時期だ。1990年代から2000年代初頭にはヤクルトなどセ・リーグ球団が盛り返したものの、以降の戦績は先述のとおり。1985年以降の日本シリーズに限れば、パ・リーグが110勝91敗3分と、セ・リーグをねじ伏せている。
「セ・リーグがDH制を本格的に検討」といった報道は過去に何度もされてきた。セ・リーグにDH制が導入されれば、投手が時折見せる意外な打撃や、投手交代をめぐるベンチワークなど、独特のエンターテインメント性が失われることになり、間違いなく今回も反対の声は挙がるだろう。
とはいえ、2011年以降のわずか9年のあいだにセ・リーグ全球団が日本シリーズという大舞台でソフトバンク1球団に敗退したこと、また球界を牽引し続けてきた巨人が4連敗と惨敗したことを思えば、今回ばかりは本格的にセ・リーグがDH制導入を検討しはじめる可能性も十分にあるかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)