白球つれづれ2019~第49回・秋山の穴を埋めるキーマンたち
西武の“暖冬更改”が話題を呼んでいる。
MVP男・森友哉が1億2000万円増の2億円(※金額は推定・以下同じ)なら、2年連続本塁打王の山川穂高も1億増の2億1000万円。投手陣に目を向ければ、中継ぎエースの平井克典が6500万増の1億円に、ストッパーの増田達至が9000万増の1億9000万円。まだいる。4番に返り咲き、打点王を獲得した中村剛也も2億8000万円から3億5000万円へ。さらに源田壮亮や外崎修汰が1億円プレーヤーの仲間入りを果たした。
日本シリーズ進出こそ逃したが、2年連続のパ・リーグ制覇に観客動員も新記録を樹立。よく働いた戦士たちへのご褒美は当然に思えるが、それだけが理由ではない。球団の懐事情である。今オフには、過去に3年契約を結んでいたエルネスト・メヒアと再契約。これまでの年俸5億円から1億円に大幅ダウンとなった。
加えて、秋山翔吾の海外流失だ。秋山の今季年俸は2億3500万円。つまり両選手のサラリーだけで6億超の大金が浮くことになる。これと、上記の主力7選手のアップ分を計算すると、ほぼ同額に近くなる。内実は「メヒアさまさま、秋山さまさま」とも言えるだろう。
とは言え、来季のパリーグ3連覇を考えたとき、秋山のメジャー挑戦で空いた穴はとてつもなく大きい。不動の1番打者として最多安打のタイトルを4度。ベストナインにゴールデングラブ賞の常連は、球界を代表する外野手の評価が定着している。では、その秋山の抜ける穴を監督の辻発彦はどう埋めていこうとしているのだろうか?
「センター」と「1番打者」
1人目のキーマンは金子侑司だ。すでに指揮官も金子の中堅起用構想を明らかにしている。
今季は左翼手として活躍。打撃こそ数字が上がらなかったが、持ち前の俊足を生かして41盗塁で盗塁王に輝いた。そして、金子が中堅に回ることで空く左翼にはもう1人のキーマンとなりそうな新助っ人がいる。先頃、前ブリュワーズから獲得が発表されたコーリー・スパンジェンバーグだ。
2011年にはパドレスに1巡目指名を受けた逸材で、メジャー通算でも打率は2割5分を上回っている中距離打者。登録は内野手ながら「内外野どこでも守れて走・攻・守そろっている。日本の野球にも適応できる」とGMの渡辺久信も大きな期待を寄せている。
今季、金子が故障で欠場した時には栗山巧の左翼起用もあったが、その栗山も来季は37歳になる。年齢を考えると出場試合数も限られてくるはずだ。同様の理由で中村に万一の事が起これば、ここでもスパンジェンバーグがキーマンになってくる。
守備はともかく、次にクローズアップされるのは1番打者の問題である。今季も開幕時は金子を1番に起用して秋山が3番に座った。楽天に移籍した浅村栄斗の穴をこうして埋めようとしたが、金子は結果を残せず、秋山も3番より1番が最適ということで修正を余儀なくされた。
この問題は森の大活躍により解消されたが、今度は替えがきかない。おそらくキャンプの紅白戦、オープン戦を通じて何通りもの1番をテストするはず。現時点では再び、金子がトップバッターに座る確率が高いだろうが、スパンジェンバーグが5~6番あたりで打線の中軸を担えれば外崎の抜擢も考えられる。
「レオの二枚腰」、来年も…?
辻の頭の中には第3のキーマンもいる。来季2年目となる山野辺翔だ。
社会人からの加入で大成功例になった源田につづく存在として高い評価を受け、源田と同じドラフト3位で入団したが、プロの厚い壁に直面してルーキーイヤーは大半が二軍暮らし。だが、ファームでは二塁手として打率.271に12本塁打と29盗塁はチームの二冠。二塁に限れば守備率も9割9分近い堅守で、いかにも辻好みの素材と言える。
山野辺が期待通りの成長を見せた場合には、二塁手の外崎を外野で起用することも可能になる。そうなると、右翼の定位置をつかんだ感のある木村文紀までウカウカできず、激しいチーム内競争が実現するだろう。
名手・秋山の穴は誰も埋められない。だが、各人の努力と飛躍によって最小限に食い止めることは可能なはずだ。FA選手が出るたびにチームの弱体化がささやかれながら「危機バネ」を発揮するレオの二枚腰。さて、来季の“辻マジック”や、いかに?
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)