「2010年代」の最強打者は…?
12月も折り返し地点が近づき、気が付けば2020年もすぐそこ。いよいよオリンピックイヤーがやってくる。
こうした区切りにあまり深い意味はないのだが、今年で「2010年代」が終了。特にこの10年は分析技術が進化したこともあって、野球のスタイルや作戦・戦術、また局地的なトレンドの移り変わりも激しかったように思う。選手に求められる役割なども都度変わってくるなか、時代に適応しながら継続して結果を残し続けてきた選手というと、どんな名前が挙がってくるのだろうか。
というわけで、今回は2010年~2019年の通算成績に注目。まずは打者の各部門をランキングでまとめてみた。
三冠打者が唯一のWランクイン
▼ 2010年代・安打数トップ5
1位 1695本 ロビンソン・カノ(27~36歳)
2位 1651本 ニック・マーケーキス(26~35歳)
3位 1647本 アダム・ジョーンズ(24~33歳)
4位 1617本 スターリン・カストロ(20~29歳)
5位 1595本 エルビス・アンドルス(21~30歳)
5位 1595本 ミゲル・カブレラ(27~36歳)
安打部門では、カノが堂々のトップ。故障や薬物規定違反による出場停止もあって昨年は80試合、今年も108試合と出場数を思うように伸ばせなかったが、序盤の貯金でNo.1の座に。シーズン200安打以上こそ2010年の1度だけだったものの、10シーズン中6シーズンで180安打以上を記録するなど、安定感が光った。
また、3位にはオリックスへの入団が決まったアダム・ジョーンズの名前も。ランク外では、アストロズの“小さな大打者”ホセ・アルトゥーベは1568安打で7位とトップ5に一歩届かなかったが、この選手はデビューが2011年7月と約1年半のハンデがあった。もしデビューが1年早ければ、カノを上回っていたかもしれない。
ちなみに、2000年代(2000~2009年)の安打数1位はもちろんイチロー。2001年デビューという1年のハンデがありながら、全シーズンで200安打以上を放ち、通算2030安打を記録している。
▼ 2010年代・打率トップ5
1位 .317 ミゲル・カブレラ(27~36歳)
2位 .315 ホセ・アルトゥーベ(21~29歳)
3位 .307 エイドリアン・ベルトレ(31~39歳)
4位 .307 ジョーイ・ボット(26~35歳)
5位 .305 マイク・トラウト(19~27歳)
※5000打席以上
打率部門の1位は、現役唯一の“トリプルクラウン”達成者・カブレラ。安打数と打率の両方でトップ5入りしたのもカブレラだけである。
また、こう見ると右打者が強さを発揮したなか、4位のボットが唯一左打者でランクイン。若くしてレギュラーを掴み、安定して成績を残したトラウトが5位に入った。
ちなみに、安打数に続いてここでもイチローの話をしておくと、2000年代のイチローの通算打率は驚異の.333。いまさら言うほどのことでもないが、まさに稀代の安打製造機だった。
カブレラか、トラウトか…
▼ 2010年代・本塁打トップ5
1位 346本 ネルソン・クルーズ(29~38歳)
2位 335本 エドウィン・エンカーナシオン(27~36歳)
3位 308本 ジャンカルロ・スタントン(20~29歳)
4位 290本 アルバート・プホルス(30~39歳)
5位 285本 マイク・トラウト(19~27歳)
5位 285本 ホセ・バウティスタ(29~37歳)
本塁打部門のトップは、年平均35本に迫るペースでアーチを描いたクルーズ。この間に本塁打王に輝いたのは2014年の1度だけだったが、4度のシーズン40発超えを記録するなど、この世代屈指の長距離砲として鳴らした。
なお、安打数・打率の両方でランクインを果たしたカブレラは、この部門では8位で初のランク外。それでも268本の本塁打を記録している。
▼ 2010年代・打点トップ5
1位 963点 アルバート・プホルス(30~39歳)
2位 961点 ネルソン・クルーズ(29~38歳)
3位 956点 エドウィン・エンカーナシオン(27~36歳)
4位 941点 ミゲル・カブレラ(27~36歳)
5位 878点 ロビンソン・カノ(27~36歳)
打点部門はすでに他部門でランクインした5名の争いに。2点差という僅差のトップ争いを制したのはプホルスだった。ちなみに、プホルスは2000年代でも1112打点で2位にランクインしている。
生まれた年やデビューに至るまでのチーム事情など、運による部分も大きいランキングになるが、この中から2010年代の“最強打者”をひとり挙げるとすれば、やはりミゲル・カブレラだろう。
打率1位・安打数5位・打点4位と3部門でトップ5入りを果たしており、本塁打も名前は載らなかったが8位にあたる268本を放っている。
また、レギュラー定着が2012年と実質シーズン強の出場ながら2部門でランクインしているマイク・トラウトも見逃せない。1991年生まれで28歳とまだまだこれからの活躍が期待される選手であり、次の「2020年代」でも各部門の上位に食い込んでくることが予想される。
文=八木遊(やぎ・ゆう)