コラム

帰ってきたレジェンドたち【白球つれづれ】

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ソフトバンクの「会長付特別アドバイザー」として1年契約を結び、記者会見する城島健司氏=20日、福岡市内のホテル

白球つれづれ2019~第51回・懐かしの顔が帰って来る


 来るべきシーズンに向けて各球団の人事もほぼ固まってきた。今回、注目するのは元巨人の最強助っ人、W.クロマティと元ソフトバンクホークスの城島健司の両氏。共に「アドバイザー」としての球界復帰となる。

 巨人の球団付アドバイザーに就任するのはクロマティだ。愛着のあるユニホームを脱いでから実に30年ぶりの里帰りとなる。今年の8月から「原監督のお役に立ちたい」と無給のゲストとしてチームに同行。臨時打撃コーチとして指導も行う中で不振にあえいでいた主砲の岡本和真に広角打法の重要性を説くと、岡本が見事に復活。高い指導力が評価されて来季からの正式契約につながった。

 クロマティが一世を風靡したのは1984年から90年の7年間。89年には打率.378の巨人歴代最高打率をマークして首位打者とMVPも獲得するなどチームを牽引した。打撃だけでなく明るい性格もファンに愛され、得点をあげて中堅の守備位置に戻ると派手な「バンザイコール」で球界の人気者になった。

 一方で、負の歴史も多く、中日戦で宮下昌己の死球に怒ってマウンドに走り出すと強烈な右ストレートを放ち一発退場。87年の対西武日本シリーズでは緩慢な守備が非難を浴びる。西武はクロマティが中前打の際に走者から視線を外し緩い送球をする悪癖をシリーズ前から分析、それが8回裏の勝負所で秋山幸二の中前打に一塁から辻発彦が一気に本塁生還する伝説のビッグプレーにつながった。

 現役引退後は2005年に日本国内で当時行われていたマスターズリーグの札幌球団に所属したり、米・独立リーグ「ジャパン・サムライ・ベアーズ」の初代監督を務めるが1年で解任など、決して恵まれた余生とは言えない。しかし、監督の原辰徳が評価するのは打撃指導だけでなく明るい性格でコミュニケーション能力も高い点にある。

 来季の巨人は外国人選手の入れ替わりが多く、クロマティには彼らに一日も早く日本生活と野球に溶け込める環境づくりの手伝いも期待している。


生かすも殺すも……


 もうひとりの復帰は、ソフトバンクの王貞治球団会長付特別アドバイザーに就く城島だ。2012年阪神で現役引退を発表すると球場から完全に姿を消した。

 現役時代から「球界一の釣り師」と呼ばれる趣味が高じて九州ローカルながら釣りの番組に出演するタレントに転身。ある雑誌では朝4時半に起床して午前中は釣りに没頭、昼寝を挟んで午後からゴルフの練習とユニークな生活ぶりが紹介されたこともある。

 ダイエーホークスにドラフト1位で入団すると、強打の捕手として早くから頭角を現し小久保裕紀、松中信彦らの強者とクリーンアップを組んで王ダイエーの初優勝に貢献した。日本人捕手として初のメジャーリーガーという勲章付きでマリナーズに入団。1年目はア・リーグ新人捕手の最多安打記録を44年ぶりに破り、18本塁打も新人球団最多タイと大暴れするが、故障もあって成績は下降カーブに。特に言葉の壁も手伝って投手とのコミュニケーションが取れなかったのが信頼を失う要因となった。

 それでも国内に戻って阪神と年俸4億円+出来高で契約したのだから、退団後の釣り三昧も納得である。

 アドバイザー就任の席で城島は王会長の度重なる要請を明かしている。

「王さんの考え方が根本にあるチーム。それを10年、20年、30年と続けていけるように手助けできれば」。

 黄金期を迎えるソフトバンクだが、その柱でもある王も来年は80歳。球団としても超多忙な会長の補佐役は欲しかったはず。王にとっても秋山、工藤公康と続く指揮官に不満はないが、自分の目の黒いうちに城島や小久保ら球団の生え抜き組に次なる道を用意しておくという布石もあるだろう。

 他にも日本ハムでは田中賢介がスペシャルアドバイザーに就任。阪神では掛布雅之が今季までのオーナー付シニアエグゼクティブアドバイザーから退くも、来季以降もオーナー付で何らかの役職に就くと言われる。

 監督でも、コーチでもない。球団の要職というほどでもない。アドバイザーとは曖昧なポジションでもある。だからこそ、そんな彼らを生かすも殺すも球団と現場の裁量だ。さて、1年後にクロマティと城島は、チームにどんな効果をもたらしているのだろうか?


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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