コラム 2020.01.10. 15:00

東京五輪の変則日程とDeNAの鬼門【短期連載:2020年の野球を考える】

無断転載禁止
DeNA・ラミレス監督

短期連載:2020年の野球を考える


 東京五輪イヤーの幕が開けた。野球界にとっても侍ジャパンの金メダル奪取が成るか? 例年とはまた違う興味の増す年だ。

 一方で、五輪の話題で盛り上がる中でペナントレースはいつも通りの活況を呈するのか? 野球人口の減少が問題となり、高校野球では様々な変革に取り組んでいる。今年も筒香嘉智、秋山翔吾、山口俊選手らのメジャー移籍が話題を呼ぶ中で「国技」とも言うべき野球はどう変わっていくのか? 気になる話題とその核心に迫ってみる。


第1回:東京五輪の余波


 今年の球界は、世界の一大イベントであるオリンピックの影響を良くも悪くも受ける。

 まず日程を見ると、両リーグの開幕は昨年の3月29日から1週間以上早くなって3月20日。さらに五輪たけなわの7月21日から8月13日まではペナントレースを中断する。こうした変則日程の余波で日本シリーズも昨年は10月19日に開幕したが、今年は11月7日開幕で発表されている。

 「五輪イヤー」は様々な対応が迫られる。すでに各選手の自主トレは花盛りだが、例年以上にハイピッチなのが特徴だ。わずか9日、開幕が早まっただけとはいえ、そこに最初のピークを持っていくためには自主トレ、キャンプから例年以上の速さで仕上げていかなければならない。細かく言えば、チームプレーやサインの確認などの作業も早まっていく。

 侍ジャパンの候補選手にとっても「開幕ダッシュ」は必須条件。特に当落線上にいる戦士は、稲葉篤紀監督ら首脳陣にアピールする必要がある。最終メンバー発表予定の6月までが勝負だ。

 各チームの首脳陣にも例年とは違う戦い方が求められる。いつもなら143試合の長丁場として組み立てていくが、今年の場合は3週間近くの五輪ブレークがある。つまり、開幕から五輪ブレークの前と後で2つのペナントレースがあるようなものだ。

 陸上競技に例えれば、マラソンが中距離走に代わるようなもの。開幕直後から猛ダッシュを見せて息切れしても7月中旬まで持ちこたえれば、五輪ブレーク中にミニキャンプなどで再調整が効く。この変則日程をうまく乗り切ったチームが秋に笑うのは間違いない。


内弁慶なベイスターズ


 五輪の余波という観点から最も気になるのはDeNAベイスターズだ。「東京」と冠都市の名前がついているが、野球とソフトボールの主会場となるのは横浜。東日本大震災からの復興五輪でもあり、開幕は福島のあづま球場で迎えるが、ソフトボールは7月28日、野球は8月8日にそれぞれ決勝が横浜スタジアムで行われる。

 球場及び周辺の開催準備もあってベイスターズが本拠地で戦う前半戦は6月7日の対ロッテ交流戦が最後。ここから「死のロード」が始まる。交流戦のビジターからリーグ戦再開後もロードまたロードゲーム。6月30日からホームで中日戦を戦うが開催球場は東京ドーム。7月、8月に入って2度のホームゲームも千葉のZOZOマリンを借りたり、新潟転戦と移動は続く。ようやく横浜に戻れるのは8月25日の広島戦だから、約2カ月半のさすらいの旅となる。

 地元や球団関係者も「国家的行事に貢献できるのだから光栄なこと」と五輪野球の横浜開催に異存はないが、ベイスターズのチーム事情だけを見れば気になる材料がある。それは“内弁慶”体質だ。

 昨年は71勝69敗3分けの成績でリーグ2位の成績を残したが、最大の泣き所がビジターゲームにからきし弱いこと。地方1試合を含めたホームでは43勝28敗1分けとセ・リーグで唯一勝率6割を超えながら、ビジターでは28勝41敗2分けと借金の山を築いた。ハマ風と熱烈応援に乗ったものの、ビジターではエースの今永昇太以外は通用しない投手陣の脆さが要因のようだ。

 「データ魔」で知られるラミレス監督が、この嫌なデータを知らないわけがない。例年以上に横浜から離れるベイスターズが“内弁慶”を解消できるのか?

 看板スターであり、チームの大黒柱でもあった筒香嘉智がメジャー(レイズ)に渡り、戦力ダウンも心配されるが、その穴は新外国人のT・オースチンや若手の成長に賭ける。五輪による試練を乗り切った時、チームは逞しい軍団に生まれ変われるはずだ。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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