先発転向に挑む松井裕樹
楽天のクローザーを務める松井裕樹が昨年末に契約を更改。4年総額10億円(推定)という大型契約となったが、それ以上に自身2度目となる先発転向を明言したことが話題となった。
松井はルーキーイヤーに先発投手として17試合に登板するも、2年目以降はリリーフ専任。プロ入り6年目となった昨季は、自己最多となる38セーブを挙げ、自身初のタイトル・最多セーブを獲得。これまでに通算139セーブを記録して、球界を代表するクローザーとしての実績があるだけに、先発への転向は大きな注目を集めるだろう。
最速153キロの直球と抜群の切れ味を誇るスライダーのコンビネーションで、桐光学園時代は先発投手として三振の山を築き、2年生時に出場した夏の甲子園大会では今治西戦で記録した22奪三振をはじめ、4試合で68奪三振という、左腕投手としての最多記録を更新したことは、いまもなお語り草となっている。
そんな松井の先発転向は非常に楽しみだが、過去にリリーフから先発に転向した投手たちの成績はどうだったのだろうか。
過去10年で9投手が経験
監督の指名、チーム事情、本人の意向など、それぞれ事情は異なるが、ここでは過去10シーズン(2010年~19年)において前年に40試合以上に登板、なおかつ先発登板がゼロだった投手で、翌年に先発登板した投手の成績を調べてみた。この10年では9人の投手が該当している。
▼ 2010年
・山口鉄也(巨人)
転向前(09):73試合 9勝1敗 4S 35H 防御率1.27
転向後(10):73試合 8勝3敗 5S 20H 防御率3.05
※先発時成績:2試合 1勝0敗 防御率5.73
▼ 2011年
・摂津正(ソフトバンク)
転向前(10):71試合 4勝3敗 1S 38H 防御率2.30
転向後(11):26試合 14勝8敗 防御率2.79
▼ 2012年
・該当者なし
▼ 2013年
・榎田大樹(阪神)
転向前(12):48試合 3勝3敗 2S 21H 防御率2.34
転向後(13):16試合 4勝9敗 防御率3.61
▼ 2014年
・山口俊(DeNA)
転向前(13):44試合 5勝2敗 7S 6H 防御率5.40
転向年(14):33試合 8勝5敗 3H 防御率2.90
※先発時成績:17試合 8勝3敗 防御率2.04
▼ 2015年
・該当者なし
▼ 2016年
・増井浩俊(日本ハム)
転向前(15):56試合 0勝1敗 39S 4H 防御率1.50
転向年(16):30試合 10勝3敗 10S 1H 防御率2.44
※先発時成績:8試合 6勝1敗 防御率1.10
▼ 2017年
・西野勇士(ロッテ)
転向前(16):42試合 3勝6敗 21S 5H 防御率3.35
転向年(17):29試合 2勝3敗 防御率4.73
※先発時成績:17試合 2勝3敗 防御率5.74
・吉田一将(オリックス)
転向前(16):54試合 5勝2敗 1S 21H 防御率2.66
転向年(17):29試合 2勝1敗 6H 防御率2.72
※先発時成績:2試合 1勝0敗 防御率1.15
▼ 2018年
・松井裕樹(楽天)
転向前(17):52試合 1勝4敗 30S 10H 防御率1.20
転向年(18):53試合 5勝8敗 5S 11H 防御率3.65
※先発時成績:2試合 1勝1敗 防御率2.45
▼ 2019年
・山本由伸(オリックス)
転向前(18):54試合 4勝2敗 1S 32H 防御率2.89
転向年(19):20試合 8勝6敗 防御率1.95
毎年のようにひとりはいるが、シーズンを通して先発ローテーションを守れたのは2011年の摂津正と昨季の山本由伸のみだった。その他の投手は、開幕直後こそローテーション入りを果たすも、慣れない起用法が影響してか本来の調子を出せず、シーズンなかごろには本来のポジション・先発に戻っているというケースが目立つ。
また、2014年の山口俊や2016年の増井浩俊のように、開幕当時は例年通りにクローザーとして起用されてもシーズンを通じて調子が上がらず、ショック療法的な起用で先発登板をして好成績を残したというパターンもある。そもそも松井裕樹自身、2018年に先発起用された際は、まさにこのケースだった。
山口はその後、本格的に先発に転向して2019年には最多勝を獲得したが、増井は翌年から再びリリーフに戻り、オリックスへ移籍後もクローザーを務めるという結果となっている。松井は今季、どんな成績を残すのだろうか。
▼ 2020年
・松井裕樹(楽天)
転向前(19):68試合 2勝8敗 38S 12H 防御率1.94
転向年(20):――――――――――――
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)