コラム

ファームに注がれる熱視線【短期連載:2020年の野球を考える】

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ロッテの新人合同練習でキャッチボールをするドラフト1位の佐々木朗(右)=ZOZOマリン

最終回:イースタンを取り巻く熱量


 プロ野球は2月1日からキャンプイン。12球団横一線の戦いが始まる。セパの開幕は3月20日だが、それよりも1週間近く早い14日にはイースタンリーグも開戦、今年は例年以上にファームの戦いに熱い視線が注がれている。

 1月16日に行われたイースタンの監督会議、その顔触れが何とも豪華だった。

 今季から二軍監督に就任したのは巨人・阿部慎之助、DeNA・三浦大輔、ヤクルト・池山隆寛、楽天・奈良原浩の4氏。これに昨年も指揮を執った西武・松井稼頭央、日本ハム・荒木大輔にロッテ・今岡真訪の3監督。名球会選手あり、タイトルホルダーからかつて甲子園を沸かせた人気者まで多士済々だ。

 球界には新旧交代の波が押し寄せており、首脳陣も例外ではない。巨人の阿部は昨年現役を引退する際に将来の一軍監督も含めたエリートコースを用意されている。西武は辻発彦監督の後釜に松井を有力候補に据えている。「ハマの番長」こと三浦もA.ラミレス監督の次と目されている人材だ。

 生きのいい若手を鍛えて戦略、戦術を学ぶ。彼らの数年後の姿を思い浮かべながら応援するのもファンにとってはたまらない魅力だろう。

 人気と知名度抜群の阿部には、一軍と変わらないほどの報道陣が詰めかけた。

 そこは心得たもので、今季からファームの練習時間を早めたり、ブルペンと野手のいる球場の往復に自転車視察を宣言したりと話題提供に腐心している。一軍は昨年のFA争奪戦に惨敗、エースの山口俊投手のメジャー移籍で抜けた穴も埋まらない。H・パーラ外野手やE・サンチェス投手らの新外国人と若手の成長に望みを賭けるがスポーツ紙の1面を独占するほどの話題性には乏しい。このままでは報道陣の「阿部詣」は止まりそうにない。


黄金ルーキーの対決も!?


 そんなファーム人気に拍車をかけるのがロッテ・佐々木朗希、ヤクルト・奥川恭伸投手の“黄金ルーキー”たちだ。自主トレ期間中にもファンが球場に殺到して即席のサイン会やグッズの販売が行われるほど金の卵の人気は高い。キャンプに突入しても専属広報が張り付くだけでなく、身辺警護のためガードマンの採用が決まっている。

 2人のプロのスタートは明暗が分かれた。佐々木は自分の手元で見てみたいという井口資仁監督の意向もあって一軍キャンプ帯同が決まったが、一方の奥川は自主トレ期間中のメディカルチェックで右ヒジに炎症が見つかったため、ファームでのスタートを余儀なくされている。

 もっとも、佐々木も奥川も高卒ルーキーであり、チームとしては決して焦らせずにじっくり育てると言うのが基本方針だ。

 佐々木を預かる一軍の吉井理人投手コーチは2月のキャンプイン後も本格投球は当面、控えさせることを明言している。奥川以上に大船渡高時代からヒジへの不安が指摘されていただけに、よほどのことがない限り、適当な時期を見計らってファームで本格調整を積むことになるだろう。

 両球団関係者は揃って「8月以降から出てきてくれれば」と語っている。彼らの雄姿を一日も早く大きな舞台で見たいものだが、現実的には二軍で切磋琢磨が濃厚。となれば、ますます今季のイースタンは熱くなる。

 1月28日に発表された同リーグの今季日程を見てみる。

 佐々木vs.奥川の夢の直接対決を前提にロッテ対ヤクルトを調べてみると、夏場を前に6カード組まれている。最も早いのは3月24日からヤクルト二軍の本拠地・戸田で行われる3連戦。だが、奥川の投球禁止令が解かれるにはしばらく時間がかかりそうだから春先の競演はあり得ない。

 仮に両投手とも8月一軍デビューを前提に考えれば6月30日からの戸田、もしくは7月7日からロッテ浦和で行われる同カードあたりが楽しみになる。もしも、本当に投げ合いが実現することになれば、一軍の試合より話題を呼ぶことは必至だ。

 昨年のイースタンでは山下航汰選手(巨人)が首位打者に、安田尚憲選手(ロッテ)が本塁打と打点の二冠に輝き、今季は一軍での飛躍が期待されている。投手では育成出身の中川虎大(DeNA)が最優秀防御率投手になっている。佐々木と奥川以外にも将来の球界を背負って立つ逸材を探すのも面白い。

 監督から選手まで。東京五輪の陰に隠れているが、例年以上にファームの熱量が半端なく高いのも確かである。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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