火中の栗を拾ったのは…
このオフ、メジャーリーグを騒がせている電子機器による「サイン盗み」問題。現地では主要メディアだけでなく、ファンの間でも「サイン盗み」問題が検証されるなど、その騒動は収束しそうにない。
そして、今回の問題の“主役”アストロズの新監督にダスティ・ベーカー氏が就任した。ベーカー新監督は現役最高齢の70歳ということもあって、契約期間は1年。2年目は球団オプションとなり、その場しのぎ的な就任にも見える。
ただ、まずはこの騒動を少しでも収めたいというチームの意向も働いたのか、“オールドスクール”のイメージが強いベーカー新監督は現在のアストロズには最適の人選と言えるだろう。
地区優勝7度の名将
アストロズの窮地を救うべく、就任したベーカー監督。今季チームはシーズンを通して各地で大きな批判、ブーイングを浴び続けることが予想される。ベーカー監督にはメディア対応など様々な試練が待ち受けていることは想像に難くない。
ベーカー監督の経歴を振り返ってみると、選手として1970年代から80年代にかけて活躍。外野手として通算1981安打、242本塁打を記録した好打者だった。37歳で現役引退後は、コーチを経て、1993年、44歳の時にジャイアンツの監督に就任。10年間で3度の最優秀監督賞に選ばれるなど、強豪チームを作り上げた。
その後もカブス(4シーズン)、レッズ(6シーズン)、ナショナルズ(2シーズン)で監督を務め、合計22シーズンで1863勝1636敗1分(勝率.532)、7度の地区優勝を果たし、ジャイアンツ時代の2002年にはワールドシリーズ進出(エンゼルスに敗退)という輝かしい実績を残している。
不安要素を乗り越えられるか!?
ベーカー監督はア・リーグ西地区3連覇中というアストロズにはうってつけの人材と言えるが、不安な点もある。これまでベーカー監督が指揮を執った4チームは全てナ・リーグ所属。交流戦も多く経験しているとはいえ、初のア・リーグで戸惑う場面も出てくるだろう。
また、ポストシーズンでの勝負弱さも不安要素のひとつだ。「サイン盗み」があったにせよ、アストロズは今季も優勝候補の一角。ポストシーズンに出場した場合、その手腕が問われることになる。もしチームをポストシーズンに導けば、異なる5チームをポストシーズンに導く史上初の監督となる。
また、今季チームの窮地を救って来季以降も指揮を執ることになれば、監督として史上最高齢での世界一も見えてくる。現在の記録保持者は2003年にマーリンズを世界一に導いたジャック・マキオン氏で当時72歳だった。
輝かしい実績を持つベーカー監督がアストロズの要請を受け、あえて茨の道を歩もうとしている。果たしてベーカー監督は、チームの窮地を救えるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)