『B魂』第3回・宗佑磨
「苦しかったですが、今後の野球人生に繋がる大事な年でした」
登録ポジションを内野手から外野手に変更して迎えた1年前の春季キャンプ、一軍スタートとなった宗佑磨は、開幕スタメンを飾った2018年以上の成績を残すべく、バッティングフォームを変えるなど、試行錯誤していた。
しかし、首脳陣を納得させるだけの結果を残すことはできず、キャンプ中盤に二軍行き。宗のことを「ライバル」と言い切った3年後輩の西浦颯大に開幕スタメンの座を奪われ、宗は開幕をファームで迎える。
その後、一軍に昇格したのは西浦に疲れが見え始めた交流戦終盤だったが、宗は「自分自身と向き合って練習に取り組めたことが収穫だった」と、シーズン序盤の出遅れを前向きに捉えた。出場試合数自体は、前年より20試合少ない54試合の出場にとどまったが、その中でも前年を上回る打率.270、7盗塁という数字を残し、チームの起爆剤となる場面も多々見られた。
宗の同期・同年代で、親友でもある鈴木優がプロ初先発をした7月10日の楽天戦では、同じく同期で同年代の齋藤綱記も昇格し、開幕から一軍にいた佐野皓大も含め、2014年ドラフトの高卒同期入団4人が初の一軍揃い踏み。この状況に宗は「オレが打つしかない」と心に決めていた。
延長10回二死2,3塁という場面で打席には宗、対するは一学年先輩で、高校時代は同じ神奈川県大会で対戦したこともある楽天の“守護神”松井裕樹。2ボールから松井が投じた3球目を強振すると、打球はライト前へ。これが決勝打となるなど、見事な有言実行で最下位からの巻き返しを図るチームの中で存在感を示した。
幅を広げた2019年
シーズン中には、ファームで練習していたサードを守る機会も増え、1試合の中でセンターからサード、サードからセンターに戻るなど、フレキシブルな動きを見せる場面もあったが、昨年の失策数は「0」だった。監督やコーチからは「日々のトレーニングと自分のイメージ通りに体を動かすこと」とのアドバイスを受け、それを実践している。
シーズン後のフェニックスリーグでも出場機会を増やすべくサードを守り、オフには佐野や西浦らとともに年末までオーストラリアのウィンターリーグに参加。23試合に出場して、打率.387、3本塁打、12打点と活躍。本人は「長かった」と苦笑していたが、バッティング面において「収穫はかなりありました」と充実感を漂わせる。
新外国人から成長著しい若手まで、内外野ともにライバルは多い。「中堅」のライバルでもある西浦については「良きチームメイト。互いに高めあえれば良い。チームは若いほうが勢いも出て良いと思う」と語り、「互いに高め合いたい」と今後も切磋琢磨していく考えだ。
高卒で入団した宗も6年目、昨年は同い年の大卒ルーキー・中川圭太が交流戦で首位打者になるなど、シーズンを通してブレイクしているだけに、若返ったチームの中で存在感を示したいところ。
宗は2020年シーズンに向けた決意を、「継続は力なり」という言葉に込めた。今年も春季キャンプは一軍スタート、「今後の野球人生に繋がる大事な1年」を経て、継続してきたものの先に見据えるのは、2年ぶりの開幕スタメン、そしてレギュラー奪取だ。
取材・文=どら増田