順調な滑り出しを見せた藤浪と斎藤
2月9日に行われた阪神と日本ハムの練習試合は、野球ファンが注目する対決となった。この日の先発投手は、藤浪晋太郎(阪神)と斎藤佑樹(日本ハム)。ともに、高校時代に全国の高校野球ファンを沸かせた甲子園優勝投手だ。
もちろん、プロでも大活躍が期待されたふたりだったが、現在は苦しい状況に置かれている。藤浪は1年目から3年連続で2桁勝利を挙げるなど順調に成長しているかに見えたが、2016年から制球難を露呈するようになり、成績は年々低下。昨季はわずか1試合の登板にとどまり、プロ入り後、はじめてのシーズン0勝に終わった。
一方の斎藤もプロ入りして最初の2年間で11勝を挙げたものの、その後は鳴かず飛ばず。3年目の2013年から昨季までの7シーズンでわずか4勝しか挙げられていない。その斎藤も31歳となり、プロ10年目を迎えた。今季はそれこそ背水の陣で臨む正念場といえる。
練習試合ながら大きな注目を集めた一戦は、ともにまずまずの投球内容だった。藤浪は初回、先頭打者にいきなり四球を出して虎党をやきもきさせたが、2回を投げて無安打無失点。課題の抜け球もほとんど見られず、最速157キロを記録するなど直球の威力は相変わらず。
対する斎藤は、変化球のスライダー、フォーク、チェンジアップが冴え、すべて空振りで4三振を奪ってみせるなど好投し、こちらも2回無失点。それぞれ、滑り出しは順調だったと言えるだろう。
自身初の10勝を挙げた髙橋光成
藤浪や斎藤など、甲子園優勝投手であっても大成できるとは限らないのがプロの世界。では、他の甲子園優勝投手はどんな「いま」を迎えているのだろうか。2004年から2018年まで過去15年間における夏の甲子園を制した優勝投手のうち、プロ入りした投手10人の昨季成績を振り返ってみる。
▼ 夏の甲子園優勝投手2019年成績
05年:田中将大(駒大苫小牧/ヤンキース)32試合(182回)11勝9敗、防御率4.45
06年:斎藤佑樹(早稲田実業/日本ハム)11試合(21回)0勝2敗、防御率4.71
09年:堂林翔太(中京大中京/広島)28試合;打率.206(34-7)0本、2打点、0盗塁
10年:島袋洋奨(興南/ソフトバンク)育成契約のまま一軍出場なく、現役引退
12年:藤浪晋太郎(大阪桐蔭/阪神)1試合(4.1回)0勝0敗、防御率2.08
13年:髙橋光成(前橋育英/西武)21試合(123.2回)10勝6敗、防御率4.51
15年:小笠原慎之介(東海大相模/中日)7試合(38.2回)3勝1敗、防御率2.56
16年:今井達也(作新学院/西武)23試合(135.1回)7勝9敗、防御率4.32
17年:清水達也(花咲徳栄/中日)8試合(35.1回)2勝2敗、防御率4.33
18年:柿木 蓮(大阪桐蔭/日本ハム)一軍出場なし
プロ入り後、唯一野手となったのが堂林翔太(広島)。プロ入り3年目だった2012年に開幕戦で一軍初出場を果たすと、全144試合に出場。14本塁打を放って「鯉のプリンス」ともてはやされたが、その後は成績が急下降。昨季の成績は、2012年以降では自己ワーストで、斎藤同様、勝負の年を迎えている。
一方、突出した成績を残し続けているのは、2006年夏の甲子園で斎藤と名勝負を演じた田中将大(米ヤンキース)だ。楽天時代の2013年に、シーズン24勝0敗、勝率10割という伝説を残して渡米した田中は、メジャー1年目から昨季まで6年連続で2桁勝利をマーク。とくにポストシーズンにはめっぽう強く、ポストシーズンにおける通算防御率は1.76。メジャーを代表する投手のひとりになった。
また、昨季、飛躍の年を送った若手が髙橋光成(西武)。西口文也の引退後、欠番となっていた背番号「13」を継承した昨季は、自身初の2桁勝利をマークした。防御率4.51と粗さはあるものの、高橋はこの2月に23歳になったばかり。今後は、菊池雄星(米マリナーズ)が退団して空席となっているエースの座を狙って、チームメイトの今井達也と共に切磋琢磨していくことになるだろう。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)