「スポーツどころではない」状況に
待望の球春到来から早2週間──。2月も折り返し地点を迎え、新シーズンの開幕まで1カ月とちょっと。しかし、日本では心配な問題が連日報じられている。
「新型コロナウイルス感染症」。このところは日本国内でも感染が相次いで確認されていて、その感染経路が不明な患者も報告されているだけに、日々不安は募るばかりだ。
コロナウイルスの影響は、世界のスポーツ界にも及んでいる。ゴルフ界では、中国とタイで開催予定だった米国女子ツアーの2試合が中止に。さらに中国とマレーシアで組まれていた欧州男子ツアーの2試合についても、延期が決定した。
ほかにも、F1の中国グランプリや、7人制ラグビーでは香港とシンガポールの大会が延期に。ラグビーユニオンの国際統括団体・ワールドラグビーは「選手、ファン、そして大会関係者全員の健康と安全が常に最優先である」と声明を発表していて、中国を中心にアジア圏ではスポーツどころではない状況になりつつある。
影響はプロ野球界にも…
そして、その余波はプロ野球界にも及んでいる。
すでに阪神や西武がジェット風船を使用した応援の自粛を要請しているほか、どうにか被害の拡大を防ごうという対策を行っている。また、日本の球団と練習試合を予定していた台湾リーグの統一ライオンズが来日を見送るなど、徐々に影響が出始めているのだ。
あす16日からはオープン戦も開幕することになるが、このまま不安がさらに大きくなるようなら、プロ野球の開催そのものが危ぶまれるということもないとは言えない。たとえ最悪の事態は回避できたとしても、予想外の対応に追われるという可能性は大いにある。
たとえば、「外国人選手の帰国」。特に初来日の選手や、小さいお子さんのいる選手にとって、日本での滞在に不安を覚えることがあっても不思議ではないだろう。
思い返して見ると、東日本大震災の時には、地震の恐怖から帰国した外国人選手もいた。見知らぬ土地で見えないウイルスが広がっているという状況を考えれば、いつ帰国する選手が出てきてもおかしくはない。
また、興行的な面で見ると、「観客の減少」も不安視されるところ。報道などを見る限り、ウイルスの感染力は「かなり強い」と言わざるを得ない。加えて潜伏期間が長いという特徴もあるようで、無症状のまま“陽性”と判定されるケースも報告されているという。
こういう状況では、多くの人が集まる球場から足が遠のいてしまっても仕方がない。さらに、最悪のシナリオとしては、「プロ野球どころではない」という状況。興行自体を「中止」もしくは「延期」することも考えられる。
数週間後、これらの心配が杞憂に終わっていれば良いのだが……。いまは個人レベルで感染予防を心掛けていくしかない。
文=八木 遊(やぎ・ゆう)