『B魂』第5回:神戸文也
2月23日に行われたソフトバンクとのオープン戦にオリックスの4番手として登板した神戸文也投手は、ソフトバンク首脳陣が期待を寄せる育成3年目のリチャードに一発を浴びたものの、西村徳文監督は「一発は打たれたけど、安定感があってよかった」と、2イニングを打者7人、24球で終えた右腕を評価した。
昨シーズンの7月末に支配下登録を勝ちとった神戸は、8月に一軍デビュー。そのデビュー戦で「初めて入ったストライク」を楽天のウィーラーにスタンドまで運ばれたが、シーズン終盤には安定したピッチングを披露し、首脳陣の期待値が上がる中で今シーズンを迎えた。
神戸自身も「昨年は支配下から上がって2カ月間。あっという間だったけど、すごく充実していた。僅差の場面や連投も経験させてもらって、ホールドも5つ記録できた。パ・リーグの全球団相手にも投げることができ、良い経験になりました」と昨季を振り返る。
しかし、2016年のドラフトで立正大学から育成3位で指名され、オリックスに入団した神戸にとっては「大卒3年目。ここで結果を出さないと…」という焦りもあった。
さらに、張奕投手が育成から支配下登録されたときに、本田仁海投手も支配下登録されるという情報があり、神戸の焦りに拍車がかかる。「(支配下選手の)枠が69になって、定数の70にすることはないと聞いていた。張くんが支配下登録されたときはまだ試合で投げてなかったので、もう終わったと思いました(神戸)」。
その結果、「(慎重にいって)ボール先行になり、バッター有利のカウントでストレートを投げて打たれる場面が多かった」という。結果的に神戸が自信を持っているフォークを活かすことができなかった。
肉体改造で球速アップ
そんな時、手を差し伸べたのが中垣征一郎パフォーマンスディレクター(今年からパフォーマンスコーチ兼コーチングディレクター)だった。
中垣ディレクターは「キツイかもしれないけど筋トレを頑張ってみよう」と神戸に提案。「スピードは140キロ後半だけど、もう一押し欲しい。ウエイトをやって力をつけると、いままで弾かれてたボールでファウルがとれたり、空振りに繋がる」とのアドバイスを受け、肉体改造に着手。その結果、週4日のウエイトで4キロ増量し、昨年はキャリアハイとなる153キロを計測した。
育成時代に酒井勉コーチから、「球筋が出しやすいところから投げるといい」と言われ、ブルペンではインコースの高めから投げて、徐々に下げることを続けており、ブルペンの調子が良くなったとの実感もあるようだ。
「今年はまず開幕一軍を狙いたい。昨年は20試合ぐらい(19試合)投げさせてもらったんですが、今年は、倍は投げたい。勝利の方程式にも入っていきたい」とも語っており、今季にかける思いは強い。
例年、春先は不調続きだったが、今年は筋トレの効果もあり、調子を落とさずにキャンプを終えることができ、オープン戦の帯同も決まった。150キロを超えるストレートと、自信を持っているフォークが冴え渡れば、後ろを任される可能性も十分にある。同級生の澤田圭佑らとともに、中継ぎ陣を牽引する存在となれるか注目だ。
取材・文=どら増田