自粛ムードのなかで…
3月19日に開幕が予定されている『第92回選抜高等学校野球大会』。その翌日にはプロ野球の開幕も控え、いよいよ本格的な“球春到来”に胸躍る季節となったが、今年は例年とは様相が異なる。
ここに来て日に日に不安が拡大している、「新型コロナウイルス」の問題。感染拡大を防ぐため、全国の小中高などに一斉休校が要請されるなど、未だに事態が収束する見込みはない。センバツ出場校に関しても、対外試合が行えなくなったり、学校が使えなくなることで練習を自粛せざるを得ない高校が出たりと、その影響を大いに受けている。
こうした混乱を受け、大会の運営委員会は4日に協議を行うという。何らかの方針を明らかにするとみられるが、この情勢では「無観客開催」もしくは「中止」となる可能性も避けられないだろう。先月28日から前売り券の販売は予定通り始まっているが、やはり「多くの人々をひとつの場所に集めるイベント」というのは難しい世の中になってきている。
大きな災害を乗り越えた過去も…
長い歴史を誇る春のセンバツだが、1942年から1946年には第2次世界大戦による中断も経験している。一方、1995年の阪神・淡路大震災、および2011年の東日本大震災という2度の苦難を乗り越えて開催されてきたという歴史もある。
このセンバツが一生で一度の晴れ舞台になるという球児も少なくないかもしれない。しかし、過去の2度の大災害と決定的に違うのが、もし大会を決行した場合、大会そのものが“震源地”になり得るという点だ。
球場への移動や宿舎での集団生活など、選手たちに感染のリスクが大きいだけでなく、さらに第三者へと感染を拡げてしまう可能性もある。震災とは違い、目に見えないウイルスが相手となるだけに、どんなに対策を施しても感染リスクがゼロになることはない。
また、同じ時期に行われるほかの高校スポーツの全国大会が次々に「中止」となっている点も見逃せない。
テニスや柔道、卓球、アーチェリーなどはいち早く大会の中止を発表。高校野球は全試合がテレビで中継されるなど、注目度の高さでは図抜けているとはいえ、同じ高校生の部活動であることもまた事実である。「部活動は学校教育活動の一環」という原則に立ち返れば、野球だけを特別視することはあってはならない、という意見が出てくるのも当然だ。
日本高等学校野球連盟は、ここまで「国内の感染状況や、他競技の試合の開催状況を参考にして判断する」という見解を示している。4日に行われる運営委員会では結論を出さず、先送りする可能性もあるだろうが、最終的には他競技と足並みを揃える形で「中止」の決断が下される可能性が高いのではないか。
甲子園出場を夢見て練習に明け暮れてきた球児たちにとっては酷な話になるが、こればかりは仕方がない。今夏の五輪開催すら危ぶまれる状況のなか、高野連がどのような決断を下すのか。注目が集まる。
文=八木遊(やぎ・ゆう)