コラム 2020.03.05. 21:30

センバツ高校野球、無観客開催方針の裏で【非常事態下のベースボール】

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阪神甲子園球場 (C) Kyodo News

短期連載:非常事態下のベースボール


 中国の武漢に端を発した新型コロナウイルスの感染問題は、今や世界中に広がり恐怖と混乱を巻き起こしている。日本国内も感染者は全国に蔓延、その影響はスポーツ界にも直撃。各種の大会は中止に追い込まれ、プロ野球オープン戦や大相撲春場所は無観客での開催を決断した。

 野球界にとっては3月19日に選抜高校野球大会が、翌20日にはプロ野球公式戦も開幕予定とビッグイベントが目白押しだ。当事者だけでなく、ファンも関係者もかつてない事態に未だ、解決の糸口さえ見つけられない。今や日本の国技とも言うべき人気No.1スポーツの「野球」は、どこへ進もうとしているのか? 現場ではどんな取り組みに腐心しているのか? 非常事態下の今を追ってみる。



第1回:センバツ高校野球


 「春はセンバツから」。季節の代名詞のように語られている、この言葉には新入学や社会人のスタートなど、春の持つ明るいイメージが込められてきた。だが、今年に限っては苦渋の決断となった。

 4日に同大会を主催する毎日新聞社と日本高野連は大阪市内で運営委員会と臨時理事会を開き、19日から予定通り開催する方針を明らかにするとともに史上初の無観客試合を併せて決定した。同時に開催の可否は11日の臨時理事会で結論を出す予定だが、今後の情勢次第では中止も視野に入れるという。

 開催にこぎつけたとしても開会式や甲子園練習はなし、13日に予定する組み合わせ抽選も例年なら各校主将が出席して行うが、今年は主催者による代理抽選となる。加えて、高野連から出場32校には15日までは練習試合や遠征合宿の自粛を要請。感染リスクの軽減と大会へ向けての公平性を担保するためだ。


賛否両論


 今回の方針決定については、当然のごとく賛否両論が語られている。

 感染を防ぐために学校自体が休校になっているのだからセンバツだけが特例視されるのはおかしい。高体連に加盟する柔道、剣道、スキー、バドミントンなど24団体は3月に予定された全国大会をすべて中止しているのに、高野連だけは許されるのか? といった否定論に対して、街の声は「一生に一度の思い出なのだから対策をしっかりやって臨めばいい」という許容派もいる。

 高野連の八田英二会長は「中止することは簡単」と前置きしたうえで、「球児の甲子園でプレーしたいという熱い思いに、あきらめることなく何とか知恵を出し、工夫して大人として何とかしてやろうということで、この決断に至った」と説明した。

 高野連では事前に出場校に対して個別に聞き取り調査を実施しているが、開催の場合「出場したい」が27校、残る5校も「万全の感染予防がされるなら」という条件付きだった。憧れの甲子園。誰だって高校球児の聖地で戦ってみたいが、今回のようなケースは過去にもない。100点満点の答えが見つからない以上、実施するなら細心の注意を払うしかない。

 無観客試合ということで、家族、応援団らの入場が禁止されるだげでなく、出場選手にも多くの制約が課せられる。宿舎での食事についてビュッフェ形式は禁止され、場合によっては全員同時でなく分散型や他の選手との距離をとるなど様々な形が模索されている。移動のバスも消毒を含め高野連が手配、さらに取材方法もスタンドで記者との距離を離して行うなどが検討されている。


様々な難問


 一方で、夢に一歩近づいた出場校にも難問が待ち受ける。

 例年なら、3月上旬のこの時期、北日本を中心とした寒冷地域の学校は温暖な地を求めて移動。合宿や練習試合に明け暮れるが、今年の場合はすでに学校の休校などで練習を自粛しているケースや寮生活を送る部員に対して自宅に帰している場合もある。そこに15日まで練習試合や遠征合宿の自粛要請が行われたため指導者も頭が痛い。当面は紅白戦や個人強化メニューに重きを置くしかない。

 最も全国で感染者数の多い北海道からは白樺学園と21世紀枠で帯広農が共に初出場する。日々の体温チェックや手洗い、うがいの励行など、やれることはすべてやっても野球練習は室内で鍛錬が精一杯。二重の苦しみをどうにかして晴らしたい。

 ウイルス問題で隠れてしまったが、今年のセンバツ大会では投手の球数制限(1週間で500球)などの改革が行われる。これも2~3人の有力投手を擁する強豪校なら心配はないが、公立校を中心とした部員数の少ないチームでは今春の練習試合などで2番手投手以降を育成したいと計画していたケースも多い。

 開催の可否を正式決定する11日に限らず、その前後でも大会期間中でも出場チームから新たな感染者が出れば、即大会は中止するという。進むも、退くも茨の道が待ち受ける。「そんな苦しい時もあったよね」。いつか、重い十字架を背負った元高校球児が笑って話せる日が来るのを祈るばかりだ。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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