コラム

日本ハム・清宮幸太郎に立ちはだかる大きな壁【白球つれづれ】

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打撃練習する日本ハム・清宮=千葉県鎌ケ谷市

白球つれづれ2020~第12回・3年目の怪物は何処へ


 あえて厳しい言葉を使う。あの怪物の持つオーラはどこへ行ったのか? チーム内の立ち位置は「お客様」なのだろうか?


 22日にメットライフドームで行われた西武と日本ハムの練習試合で久しぶりに清宮幸太郎選手の現状を確認してみた。ベンチスタートの5回から中田翔選手に代わって途中出場、7回に回ってきた初打席では西武の抑えエース・増田達至投手の速球を捕えて中前打を放った。

 本人は「しっかりとらえられた。このまま続けていければ」と一定の手ごたえを感じていたが、首脳陣の受け止め方は違う。24日からは一軍を離れて二軍の西武戦に合流させると言う。あくまで打席数を増やして実戦感覚を養うためだが、調整遅れを露呈した格好とも言える。

 栗山英樹監督が言う。「自分で結果を残すしかない」「人生の中で、今が一番必死になってやらなきゃいけない時期だろう」。

 試合前に、指揮官と清宮の現在地について話を聞いた。ともかく昨年秋に手術した右肘のため、守備も打撃も調整遅れに頭を悩ませている。プロ入り以来2年間は故障続き。1年目は腹膜炎で出遅れ、昨年は春先に右手有鈎骨骨折と秋のひじ痛。その影響が3年目の今年も出ているのだから期待が大きい分、いらだちも募る。


好調なライバルたち


 西武戦の試合前練習。ランニングの先頭に立ち、声もよく出ている。だが、それは20歳の若者にとって当たり前のこと。いざ、本格練習が始まると三塁から一塁への遠投が精一杯。外野で守ることはない。他の選手が打撃練習を始めても一人でストレッチをしたり、手持無沙汰な様子も見受けられ打撃ゲージに入ったのは全野手中の最後だった。つまり控え選手の扱いなのだ。

 そのバッティングはさすがに非凡なものがある。ポンポンとさく越えを連発しているが、実戦に入ると結果を求めて本来の豪快なスイングが影をひそめてしまう。3月14日の対DeNA戦でも最終回にプロ入り初のサヨナラ中前打を放つが、栗山監督の採点は「打ちに行っている球が捕まっていない」と辛口なものだった。

 昨年の5位転落から巻き返しを誓うチームには明るい兆しも見える。投手陣では一昨年10勝をあげながら昨年は故障で未勝利に終わったN・マルチネスが復活気配。ドラフト1位の河野竜生も先発ローテーション入りが期待できる。打者に目を転じれば4番の中田翔が絶好調、昨年台湾から鳴り物入りで入団した王柏融選手も見違えるほどの出来にある。

 もっとも、この両選手が好調であるほど清宮の存在価値は薄れているのが現状だ。外野は左翼・近藤健介、中堅・西川遥輝、右翼・大田泰示の各選手で盤石なら指名打者に王が回る。ひじ痛からの復調を期す清宮の場合、外野を任されることはなく、一塁か、DHの二番手候補、これでは昨年以上のブレークは考えにくい。


一流と呼ばれる男たち


 故障に加えて、プロで取り組む姿勢の甘さを指摘する関係者もいる。高校通算111本の本塁打記録を携えて日本ハム入り。入団時には早実高の先輩・王貞治氏の868本塁打更新を誓い、将来のメジャー挑戦の夢も語った。プロの出発地点の大言壮語は許されても、現時点ではプロ同期の村上宗隆選手(ヤクルト)にも大きく水をあけられている。

 今年の成人式では「東京五輪の出場を目指したい」と語っているが、夢を語る前にまず足元を見つめてやるべきことがあるだろうという声にどう答えを出すかが先決である。

 偉大な先達である王氏はもとより、現役でも西武の山川穂高選手や広島の鈴木誠也選手らは猛練習で現在の地位を手にしている。一流と呼ばれる男たちは血のにじむ努力を決して怠らない。天性だけでトップに上り詰めたアスリートは皆無と言っていいだろう。

 清宮が何十年に一人の逸材であると信じるからこそ、あえて苦言を呈する。まずは猛練習に耐えうる肉体を作ることが先決だ。中田や王から出番を奪わない限り怪物の記録も生まれない。まだ3年目だがもう3年、そろそろ、指揮官のいら立ちに気付くべき時が来ている。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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