見えない先行き
世界各地に広がる新型コロナウイルスの感染。特に欧米では爆発的に感染者が増えており、収束の気配は全く見えない。
メジャーリーグではキャンプが打ち切られてからまもなく2週間が経つ。本来なら現地時間26日(日本時間27日)に一斉に開幕する予定だったが、現時点では早くても開幕は5月中旬。現実的に見れば、6月中の開幕も厳しいと言わざるを得ない状況だ。
まさに死活問題
メジャーリーグの下部組織、マイナーリーグではもともと待遇面に課題があり、開幕延期は選手にとってまさに死活問題。当初は球団ごとに補償を行っていたが、先日、MLBとして、マイナーリーガーに1週間当たり400ドル(約4万4000円)を支払うことが報道された。しかしこれは4月上旬までの応急処置であり、それ以降の補償に関しては検討が続けられている。
もちろん選手だけでなく、球場で働くスタッフらにも影響は広がっている。メジャー30球団は、それぞれの球場スタッフに対して各100万ドル(約1億1000万円)、総額3000万ドル(約33億円)を寄付することを決定。これと同じタイミングで、メジャーリーグ機構と選手会は2つの慈善団体に50万ドル(約5500万円)ずつ、合計100万ドル(約1億1000万円)を寄付することも発表した。
メジャーリーガーの粋な支援
他にもメジャーリーガーたちから様々な形で支援の輪が広がっている。パイレーツは地元ピッツバーグの病院スタッフに対し、大量のピザとパスタをプレゼント。最前線で働く医療従事者に感謝の気持ちを示した。この“サプライズ”は客足が遠のく地元レストランの助けにもなっており、まさに一石二鳥だ。
多くの選手が募金や食料を支援する中、パイレーツに所属する投手のニック・バーディは違う形での支援を行った。
日本でも一時報道されていたが、新型コロナウイルスの渦中において、アメリカでも輸血用の血液が不足しているという。バーディは報道でこのことを知り、率先して献血を受けたという。これに感化されたチームメートたちにも献血の輪が広がっている。
支援の形は様々だ。ヤンキースなどで活躍したアレックス・ロドリゲス氏は自身のインスタグラムで“野球教室”を開催した。
世界中の子供たちが家庭学習を強いられる中、ロドリゲス氏は、「未曾有の状況に置かれるなか、野球を少し教えようと決めた。メジャーへの足がかりをつかむために12歳、13歳、14歳のころにやっていたコツも教えたい」というコメントとともに約1時間にわたって技術などを伝えた。
メジャーリーグの組織内外では様々な形で支援の輪が広がっているが、共通の願いは一日も早い終息であることは間違いないだろう。
文=八木遊(やぎ・ゆう)