『B魂』第6回:前佑囲斗
オリックスのドラフト4位ルーキー、前佑囲斗投手(18)が3月20日に行われたファームの練習試合(大商大戦)に初登板し、1イニングを2奪三振、三者凡退で抑える無失点デビューを飾った。
初登板後の前は「良かったですけど、まだまだこれから。初登板から徐々に成長出来るように頑張ります」と、無失点デビューに安堵の表情を浮かべながら、これから始まるプロでの闘いに向けて気を引き締めていた。こういう貪欲な姿勢は、前の魅力のひとつでもある。
ドラフトで指名を受けた後も「少しでも早くプロ野球の世界に溶け込めるように」と、日々の練習を欠かさず、準備を続けてきた。入寮後も「プロの施設には、自分を成長させてくれるものがたくさんある。毎日しっかり疲れをとることができるし、好きな時に練習をして自分の成長を感じることができる」と、寮の隣に最新の練習施設が整っている現状に目を輝かせていた。
そして合同自主トレでは、「プロの世界ではどんな状況でも抑えないといけない」と、基本的な体の使い方を反復し、「どんな日でも自分のパフォーマンスをしっかり出せるような土台づくり」に勤しんだ。
『43』を継承した高卒右腕
その言葉の端々に力強さを感じさせる18歳の右腕は、捻挫しやすいという足を日々のトレーニングで強化していくメニューにも取り組み始め、「違いをすごく感じられている」と自信を口にする。キャンプでは、コーチなどから「インステップを少しでも治せるともっと良いボールがいく」とのアドバイスを受け、周囲の先輩たちの姿からは調整の大切さを学ぶなど、随所に意識の高さをうかがわせる。
今や球界を代表する投手のひとりに成長した山本由伸投手(21)が背負っていた『43番』を引き継いだ高卒ドラ4右腕、ファンの前に対する期待値も高い。自身の背番号を譲る格好となった由伸も「前くんとは連絡も取り合っている。早く近くでピッチングを見てみたいですね」と、かわいい“後輩”の活躍を心待ちにしている。
前も「山本さんには良くしてもらっているのでありがたい。先輩たちも優しく、楽しく野球をできている」と笑顔を見せつつ、「1年目ですが、いっぱいアピールして一軍で活躍できるような選手になりたい」と高みを見据えた。
ルーキーイヤーから一軍での登板、プロ初勝利を目指している前佑囲斗は、考え方がスマートで、ハートも強い。『43』という数字が前の背番号として、ファンの目に馴染むのも遠い未来の話ではないだろう。
山本由伸と前佑囲斗を担当した山口和男スカウトも「由伸の次はコイツがきますから」と太鼓判を押すほどの素材だ。先行きの不透明な状況が続く球界だが、ここから前が成長していく過程を、しっかりと見守っていきたいと思う。
取材・文=どら増田