畠山二軍打撃コーチの“感覚”を意識
外野のレギュラー争いに割って入れるか――。今季プロ5年目となるヤクルトの渡邉大樹が初の開幕一軍へ向け、打撃面で確かな手応えを得ている。
高校通算17本塁打を放ち、千葉の専大松戸高から15年ドラフト6位でヤクルトに入団した渡邉。入団時は大型遊撃手として期待されたが、武器である俊足を生かすため4年目の昨季に内野手から外野手に転向。この年の5月10日の巨人戦(東京ドーム)には代打でプロ初安打となる本塁打を放ち、潜在能力の高さを見せつけた。
勝負の5年目。今春のキャンプは二軍の西都で汗を流した。オープン戦では無安打に終わったが、本来は開幕2戦目のはずだった3月21日の練習試合(阪神戦)に「9番・中堅」でスタメン出場。一軍の舞台で4打数2安打と結果を残すと、さらに、翌22日も代走からの途中出場ながら中堅へ安打を放ち、2試合続けてアピールに成功した。
「二軍のキャンプで(打撃コーチとともに)やってきたバッティングが、ファームの試合では状態が良かった。それが、一軍の試合でもこうやって結果を出せて良かったです」
思い切りの良いスイングを持ち味とする22歳は、「畠山さん(二軍打撃コーチ)の“感覚”を意識しているところがある。状況に応じてですけど、今は思い切っていった方がいいかなと思っている」と話す。
今季からは、ヤクルトの4番を務めた畠山和洋二軍打撃コーチが新たに就任。15年に打点王のタイトルを獲得し、リーグ優勝に貢献した同コーチの指導を受けているが、渡邉自身も182センチ、87キロという体格だけに、畠山コーチの豪快な打撃スタイルとも重なるところがある。
初の開幕一軍へ向け
ヤクルトは左翼を守っていたバレンティンが抜けたことで、外野の一枠を狙う争いが激化。オープン戦で打率.302と結果を残した3年目の塩見泰隆が一歩リードしているが、開幕が不透明な状況の中で、若手選手は良い準備期間とアピールの場にしていきたい。渡邉もその中の一人だ。
渡邉は自身の置かれている立場を「ファームの試合がなくて一軍の試合があるときとかに(一軍に)上がってくる感じ」と話すが、初めての開幕一軍へしっかりと先を見据えている。
「ファームでしっかり試合に出て状態をキープしたい。しっかり(一軍に)呼ばれたときに結果を出して、(開幕一軍に)向けて頑張りたいです」
今季、ルーキーとしてプロの世界に飛び込んできた大卒選手とは、同い年となる高卒5年目。プロの先輩として負けられないシーズンとなるが、5年目の開花へ向け、渡邉の戦いは既に始まっている。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)