復帰1年目にして5年ぶりのリーグVに導いた原辰徳監督
2019年、広島の4連覇を阻んでセ・リーグを制したのが、原辰徳監督率いる巨人。「強い巨人」の復活を…。チームとして5年ぶりの優勝を期待されるプレッシャーのなか、監督復帰1年目にして見事にリーグ制覇を成し遂げてみせた。
一方のパ・リーグを制したのが西武。2014年から3シーズン連続でBクラスに沈んでいたが、辻発彦監督が就任した2017年以降のリーグ順位は、2位・1位・1位と、1980年代から1990年代にかけての黄金期を思わせる強さを見せている。
過去の実績からすでに「名将」と言ってもいい原監督はもちろんのこと、それまでのチームの野球をがらりと変えてきっちり結果を出し続けている辻監督も、そのチームづくりや采配によって勝利をもたらす「名将」への道を着々と歩んでいると言えるだろう。
では、「現代野球最強の名将」というと、いったい誰になるのだろうか…?
ここでは、1990年から1998年までヤクルトを率いた野村克也監督がデータ重視の「ID野球」を確立し、また、いまではあたりまえとなっている投手の分業化が進んだ1990年代以降のプロ野球を「現代野球」と位置づけ、1990年からの30シーズンにおいて、監督別のレギュラーシーズン1位となった回数を調べてみた。
▼ 監督別「シーズン1位」回数ランキング
<1990年~2019年>
1位:原 辰徳 8回(巨人:2002、2007-09、2012-14、2019)
2位:森 祇晶 5回(西武:1990-94)
2位:王 貞治 5回(ダイエー:1999-00、2003-04/ソフトバンク:2005)
4位:野村克也 4回(ヤクルト:1992-93、1995、1997)
4位:落合博満 4回(中日:2004、2006、2010-11)
6位:長嶋茂雄 3回(巨人:1994、1996、2000)
6位:星野仙一 3回(中日:1999/阪神:2003/楽天:2013)
6位:秋山幸二 3回(ソフトバンク:2010-11、2014)
6位:緒方孝市 3回(広島:2016-18)
2度のリーグVで続くパ・リーグ現役監督3人
振り返ってみると、1990年以降の30シーズンに限ってみれば、原監督が8度のシーズン1位というダントツの回数を誇る。
原監督が指揮を執ったのは計13シーズン。シーズン1位を逃したのが5度のみということを思えば、まさに優勝請負人である。
次いで2位となったのは、先述した西武の全盛期を築き上げた森祇晶監督と、王貞治監督。森監督に関しては、1990年以降ではシーズン1位となったのは5度だが、1980年代も含めれば原監督と並ぶ8度。しかも、監督としてシーズン1位を逃したのはわずかに1度という驚異的な勝率を誇る。
一方、王監督は「不運の監督」ともいえる。シーズン1位となった回数は5度だが、プレーオフ(現クライマックスシリーズ)の最終戦で破れた2004年と2005年については、リーグの規定によってそれぞれ西武とロッテに「リーグ優勝」を譲っているからだ。
また、上記ランキングのなかでも目を引くのが星野仙一監督ではないだろうか。
シーズン1位の回数は3度にとどまるが、中日・阪神・楽天と別のチームを率いての1位。勝手知ったる古巣ではないチームを率いてのシーズン1位には、大いに価値があるといえるだろう。
そして、彼らに続く2度のシーズン1位を記録している現役監督が、辻監督と工藤公康監督(ソフトバンク)、そして栗山英樹監督(日本ハム)という、いずれもパ・リーグの3人。今後数シーズンのうちに、「名将ランキング」の上位に食い込んでくるのかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)