『B魂』~第7回・紅林弘太郎~
オリックスの高卒ルーキー・紅林弘太郎選手に対する期待値が高まっている。その理由は、186センチ、82キロの恵まれた体躯と意識の高さにある。
生まれ育った静岡から大阪に移るまでは、瞬く間に過ぎていった。紅林はその日々を「ドラフト指名を受けたときは、ホントに実感が湧かなくてフワフワしていた。入寮まではほんとにあっという間に過ぎていったような気がします」と振り返る。そして、大阪に移り入寮してからは、すぐに新人合同自主トレが始まった。
合同自主トレについては「キャンプを乗り切る体づくりを目的としてやっていたので、辛い練習とかはあまりしてないです」と語り、「しっかり自分をアピールして、いま持っている力を出して首脳陣に見てもらえるように意識しました」という。その中で「高校とプロではやってる野球が違うというか、ほぼできていないことばかりだった。まず野球というもの自体を学びました」と現状を痛感した。
「小中高と公立のチームで野球をやっていて寮生活も初めて」という紅林は、「室内練習場にしろ寮生活にしろ全てが初めて。野球をやる上でこれ以上ない環境」と目を輝かせ、野球漬けの生活を送る中でプロのエッセンスを吸収していった。同期間の絆も深まり、先輩からも良くしてもらっていると笑顔を見せる。
ただ、春季キャンプで待ち受けていたのは、いかんともしがたい現実だった。
「春季キャンプの練習で思ったのは、すべてにおいて勝てている所がひとつもないということ。技術はもちろん、体力、バットを振る量、ボールを取る量が、今までやってきた練習とは比にならないくらいでした。とても辛く毎日ついていくことしかできなかった。試合ではヒットも出ましたが先輩に助けられたところが多く、できていないことばかり。自分の立ち位置を知れて良い経験になりました」
厳しい現実を目の当たりにした紅林だったが、巨人二軍との練習試合で早々にヒットを放つなど、能力の高さを示し、首脳陣からも高い評価を受けていた。
入団会見などでは「体づくり」を課題にあげていたが、コーチやトレーナーからは「まず一つひとつ丁寧にやることと、ウエイトトレーニングにしても、野球の練習にしても、こなしてるだけの時があったので意識を持ってやること」といったアドバイスを受けたという。
キャンプでは肩を痛めたが「だんだん良くなってきました。仕上がりはいいです」と大きな問題はない様子。「キャンプを総括して言えることは、何もまだできていない。プロの世界で通用するものが何もないということがわかったので、もっと練習して、1年目から自分の特徴を出して、1日でも早く一軍に上がれるよう努力します」と前を見据える。
現在の情勢に関しても「新型コロナウイルスの影響で混乱していますが、自分たちの全力プレーで皆さんに元気や勇気、夢を与えられるよう頑張ります」と、プロとしての自覚は十分。自身の課題に関しても「まだ自分のスイングができてない」と語り、「これからもたくさん学んでいきたい」「とにかく二軍でたくさん試合に出て、色々なことを経験しながら体力をつけ、一軍の戦力になれるように」と意欲的だ。
目標は「宜保さんや太田さんのように、(高卒)1年目から一軍の試合に出ること」。ルーキーイヤーの一軍デビューだ。
取材・文=どら増田