社会人野球のドラフト候補【投手編】
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、アマチュア野球はすべての公式戦が止まっている状態。なかでも「ドラフト」という観点で見ると、最も大きな影響を受けているのは社会人野球の選手たちだろう。
7月に予定されていた「日本選手権」は早々に中止が決まり、その代表チームを決める大会も全て開催されないことになった。また、社会人野球最大の大会である「都市対抗野球」は、新型コロナの感染が問題視される前の昨年5月の段階で、東京五輪の日程に配慮するためこれまでの7月からドラフト会議後へと開幕日が変更されている。公式戦でのアピールの場は、例年と比べて激減していると言えるだろう。
そんな選手たちを応援する意味も込めて、ここでは社会人野球のドラフト候補選手を紹介していきたい。今回は投手編。
トヨタ自動車・栗林良吏が投手の“筆頭候補”
社会人の投手で筆頭候補となるのが、栗林良吏(トヨタ自動車)だろう。
名城大時代に愛知大学リーグで通算32勝をマーク。3年春にはノーヒット・ノーランも達成するなど、この時点でプロ入りできる力はあり、プロ志望届も提出していたが、いわゆる“順位縛り”もあってドラフト指名はなし。社会人へと進んだ。
昨年はルーキーイヤーながら層の厚いトヨタ自動車の投手陣の中でもエース格となり、都市対抗や日本選手権でも好投。オフに台湾で行われたアジアウインターリーグでも見事な投球を見せている。
序盤から終盤まで140キロ台後半のスピードを維持することができ、変化球も一級品。牽制やクイックなど投げる以外のプレーも安定している。プロでも1年目からローテーション入りが期待できるだけの実力者で、順調にいけば1位指名の12人に入ってくるだろう。
続いて人気になりそうなのが、佐々木健(NTT東日本)と藤井聖(JX-ENEOS)のサウスポー2人だ。
佐々木は富士大で3年時までは目立たなかったが、同期の鈴木翔天(楽天)が故障で離脱した4年時にブレイク。大学選手権でも好投し、日本代表候補合宿にも召集された。
昨年は都市対抗、日本選手権ともに先発を任せられながら早々に降板する苦い1年目となったが、好調時の140キロ台後半のストレートは目を見張るものがある、いかにコンスタントに結果を残せるかが今年のテーマとなりそうだ。
一方、藤井は東洋大の同期に甲斐野央(ソフトバンク)や上茶谷大河(DeNA)、梅津晃大(中日)がいたため、佐々木以上に大学での実績はないが、社会人では1年目から主戦として活躍。10月に行われたBFAアジア選手権大会では、社会人の日本代表にも選出され、3試合にリリーフで登板していずれも無失点と好投を見せた。
きれいに上から腕が振れ、175センチという上背以上にボールの角度があるのが持ち味。緩い変化球の使い方も上手い。今年は故障で出遅れているが、活動自粛期間中にしっかり治して、万全の状態でアピールしたいところだ。
大卒2年目、高卒3年目にも気になる候補が…
その他の大学卒2年目の投手では、青野善行(日立製作所)や山本晃希(日本製鉄かずさマジック)、平川裕太(鷺宮製作所)、伊藤優輔(三菱日立パワーシステムズ ※三菱パワーに社名変更予定)、森田駿哉(Honda鈴鹿)、大江克哉(NTT西日本)、川瀬航作(日本製鉄広畑)などが候補となる。
スピードなら山本がNo.1の評価。コンスタントに150キロを超え、好調時は打者を圧倒する投球を見せる。コントロールと変化球は課題だが、スケールの大きさは魅力だ。
安定感では平川と大江が光る。ともに体はそれほど大きくないが、全身を使った躍動感のあるフォームで小気味良いピッチングが特長だ。
富山商高時代から大器と評判だったのが森田。法政大では1年春に開幕投手を任された後は故障で低迷したが、社会人で復活の兆しを見せている。貴重な大型サウスポーだけに引き続き注目度は高くなるだろう。
高校卒3年目では、小野大夏(Honda)や森井絃斗(セガサミー)、池谷蒼大(ヤマハ)、松本竜也(Honda鈴鹿)の名前が挙がる。
小野は健大高崎高時代からスピードには定評のあった右腕。社会人でも着実に持ち味のストレートを磨いてきただけに、リリーフタイプとして面白い。
森井も板野高時代から評判の大型右腕。数字の割に空振りを奪えないのは課題だが、150キロ前後のストレートは威力十分だ。
池谷はセンスの良さが光るサウスポー。スピードは物足りないがボールに角度があり、投球術も長けている。
松本はバランスの良いフォームと球持ちの良さが持ち味。年始には中日が1位候補に挙げるなど、その素材の良さに注目が集まっている。
最後に、昨年が“指名解禁”だったものの声がかからなかった投手たちも。小木田敦也(TDK)や阿部陽登(日立製作所)、西田光汰(JR東日本)、横尾蓮太(王子)といったところは高校卒4年目とまだ若さがあるだけに、プロ入りの可能性は十分に残されているだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所