コラム

目先の結果よりも、さらなる明るい未来を見据えて…広島・遠藤淳志の飽くなき探求心

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広島・遠藤淳志

期待の高卒3年目右腕の挑戦


 見た目の移り変わりに、入団時から変わらないハングリー精神が透ける。先輩の大きな背中に憧れながら、広島・遠藤淳志投手(21)の投球フォームは大胆に変化してきた。


 高卒2年目の昨季に一軍昇格を果たすと、中継ぎとして34試合に登板。さらに、秋季キャンプでは就任直後の佐々岡真司監督の目に留まり、先発候補にまで評価を上げて迎えた今季だった。

 春季キャンプの2週間前、右腕はこれまでの投球フォームを白紙に戻す。1月に鴻江スポーツアカデミーでの合同自主トレに参加。練習をともにしたソフトバンク・千賀を思わせる急造フォームで日南春季キャンプに臨むも、結果は伴わず…。首脳陣の評価はキャンプ序盤から目に見えて下がり始める。


 「まだ完成はしていないので…」

 もがきながらも新たな挑戦を諦めない姿勢は、ちょうど2年前、あどけない童顔で新フォームを試していた頃と重なった。


鯉のエースをまねて…


 高卒1年目、2018年の日南春季キャンプ。男は高校時代のセットポジションを捨て、ワインドアップで投げ込んでいた。


 「マエケンさんに似てるね」

 同僚の何気ない一言がきっかけだったという。

 新入団選手発表会見の資料には、身長184センチ・体重74キロとある。細身高身長の体格が、前田健太(現ツインズ)と結びついたのだろう。そこから、前田のフォームをまねた。ワインドアップだけでなく、グラブの運び方までそっくりに似せた時期もあった。


 昇格をかなえた2年目には、一軍同行中に2段モーションに変更した。

 「大地さんを参考にしました」

 2段を導入した2018年に自己最多の15勝を挙げ、翌年も先発の柱としてフル回転していた大瀬良のモノマネを、見よう見まねで取り入れた。念願の一軍の舞台でも投球フォームを変えようとする好奇心が、成長を支えてきた。


目先の結果より、明るい未来


 それから、今春。憧れ続けた開幕ローテーション入りを目前にした中でも恐れることなく、千賀のモノマネからヒントを得ようとしたのだ。

 ただし、今回は成功しなかった。日南キャンプ中のシート打撃、紅白戦などで結果を残せず、春季キャンプ10日目には“千賀フォーム”を断念した。


 「新しいフォームで手応えを感じなかった。最後は自分で決断した。迷っていたけど吹っ切れました」

 佐々岡監督は、「参加したといっても3~4日。名前を出すことは千賀君に対して失礼」と厳しい言葉で奮起を促していたものの、後日には、試行錯誤を続けた向上心を評価していた。「いろいろ試すことが悪いわけではない。フォームを戻して、やっぱり自分に一番合うものが分かったのではないかと思う」。挑戦は、決して失敗ではなかった。


 本調子を取り戻すのに、時間はかからなかった。

 「(千賀を参考にした)セットポジションをやっていたときから、自分のワインドアップのイメージをなくさなかったのですぐに戻せました。シーズン中の動画を見たりしていた。イメージをなくさなかったのがよかったのかな…と思います」

 一か八かの賭けとして急造フォームに挑戦していたわけではない。本来の投球フォームを完全には見失わないような準備を同時並行で進めながら、与えられた制限時間いっぱいまで新たなヒントを探し求めていたのだ。


 ドラフト5位入団。高卒3年目で先発候補に名前が挙がるまでに、順調なステップを踏んできたように見える。それでも、周囲の高評価に惑わされることなく、ときには大胆に投球フォームを見つめ直してきた。

 目先の結果以上に、さらなる明るい未来を追い求めてのことだろう。マエケン、大瀬良、千賀――。いまは手の届かない、遠くに見える先輩の背中が、遠藤を勇敢にさせている。


文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)
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