コラム 2020.05.15. 08:00

見えてきた開幕と課題…今こそ“ラグビー精神”に学べ【非常事態下のベースボール】

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NPBの斉藤コミッショナー

高まる開幕への気運


 プロ野球の開幕がおぼろげながら見えて来た。11日に行われた12球団代表者会議において「開幕日の明言はできない」としながらも、「6月の半ばから下旬のどこかで開幕できることを目指そうということで12球団が一致した」ことを斉藤惇コミッショナーが明かした。現時点では最短で6月19日、遅くとも26日をメドとすることになる。

 これまでも、3月20日の開幕予定日が流れ、4月24日、5月中と延期を繰り返してきた。今回もその恐れが皆無ではないが、新型コロナウイルスの感染状況は全般的に収束に向かっており、現実味は増している。14日の政府専門家会議では東京、大阪らの特別警戒地域を除く39県には非常事態宣言の解除が決まり野球界にも本格トレーニング再開の機運は高まっている。

 これまでに交流戦の中止が決まり、11日の会議ではオールスターゲームの中止も発表された。この先も当面は無観客試合の方針が打ち出され、試合数も100~120試合程度と大幅な削減は避けられない。臨時で開かれたオーナー会議でも球団経営の観点からかつてない危機感を共有したという。

 メジャーリーグで話題になっている選手の年俸削減問題も、今後話し合われる課題になるだろう。国民の暮らしから経済、野球を含めたスポーツや文化まで、過去に経験したことのない国家的危機なのだから、その解決法は容易に見つからない。だからこそ、今はその先に見えるはずの光を信じて英知を結集するしかないだろう。


課題と栗山監督の私案


 プロ球界では目下、開幕を迎えるにあたってどんな試合形式がベストなのか試行錯誤が続いている。イベントを開催するにあたっての大きな注意事項はいくつかある。

 「三密」の厳禁はもちろん、選手たちの安全を考慮した時に「移動時のリスク」を指摘する専門家は多い。そんな中で議題として取り上げられたのが、試合会場をセ・リーグは東、パ・リーグは西に分離しての集中開催案だ。通常なら同一カードは3連戦で行うが、これを6連戦とするなど、同一宿舎、近場の移動なら感染リスクの軽減につながるメリットがある。

 さらに移動リスクを考えたとき、飛行機利用ならチャーター機、新幹線ならグリーン車の借り切りなども話し合われたようだが、いずれも結論は持ち越している。リーグ別に見た場合でもセ・リーグは東京、神奈川、兵庫に4チームの本拠地があり、特に東京の感染状況次第では、まだまだ開催を不安視する向きもある。

 一方でパ・リーグは、北海道から九州までフランチャイズが分散しているため移動リスクをどう解消するのか。さらに一地方で集中開催すると地元以外のチームは不利という声が上がったと聞く。まずは開幕日が決定しなければ試合会場も宿舎も抑えられない。方向性だけでなく各論の構築が求められる。

 そんな中で、大胆なシーズン改革論を語ったのは日本ハム・栗山英樹監督だ。各リーグが地域集中して行う開催案に対して「現実的ではない」としながらも、条件付き私案を提示する。

 「全収入を吸い上げて12球団に分配するという大きな決断が必要、それなら一つの考え方としてはある」。

 北海道を本拠地とする日本ハムの場合、日頃からソフトバンクと共に他チーム以上に移動範囲は広く、経費もかさむ。そんな事情はあるにせよ、根底の考え方はメジャー方式である。


今こそ共存共栄、一致団結へ


 都会の金満球団から地方都市の弱小球団までを有するメジャーリーグでは、テレビ放映権をコミッショナーが一括管理して各球団に分配金を与える。一部球団の補強費が突出した場合には「ぜいたく税」を課してブレーキをかける。共存共栄の精神がそこにはある。

 昨年はラグビーのW杯で日本中が熱狂した。「ワンチーム」は流行語にまでなった。ラグビーにはもうひとつ愛されるフレーズがある。

「ONE FOR ALL, ALL FOR ONE.」

 一人はみんなのために、みんなは一人のために。

 球団経営の損得勘定や勝負での不利有利。日頃は火花を散らす関係でも未曽有の危機に直面する今、最も求められるのはこのラグビー精神ではないだろうか? 12球団が開幕で心をひとつにしたのなら、次なる難問もきっと解けるはずだ。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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