コラム

開幕日決定も…日本流開幕の危うさ【非常事態下のベースボール】

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巨人の本拠地・東京ドーム

開幕に向けた新たな動き


 巨人は27日、新型コロナウイルスの感染歴を調べる抗体検査を行うことを発表した。原辰徳監督以下首脳陣、選手、スタッフやフロントも含めて総勢220人の内、希望者を募る形で行う。これに先立ち、ソフトバンクも同日総勢150人が抗体検査を行っている。

 抗体検査とは微量の血液から、新型コロナウイルスの感染歴を示す抗体の有無を調べるもの。PCR検査が感染しているかを調べるのに対して、そこまでの精度はないものの短時間で結果がわかることから、集団内の感染の既往を把握するのに適していると言われている。

 すでに開幕している台湾や韓国ではPCR検査を義務付け、徹底した予防対策のもとでプレーしている。こうした他国の状況も参考にしながら6月19日の開幕を決定したNPBだが、こうした検査態勢を全球団に義務化させることはなかった。「PCR検査の場合は陰性が陽性になったり、時間がかかることもあって本格議論にはならなかった」とNPB関係者は語る。

 国全体を考えても、当初の検査体制が整わずに世界に比べても格段に低い受診率となっている。一説には同検査を幅広く実施すると陽性患者が多数出て、医療崩壊を起こしかねないから抑えているという意見もあったほどだ。

 しかし、無観客で始まる公式戦が観客を入れていく時に、全員がPCRなり抗体検査を受けていれば安全性は格段に担保されるはず。「野球で夢や感動を届ける」と言うなら、球界全体で取り組むべき問題かもしれない。


海の向こうでは……


 一方で、メジャーリーグ(以下MLB)の開幕に暗雲が垂れ込めている。

 3月の段階でMLBと選手会では「試合数に比例した年俸削減案」で合意したが、その後にコロナ禍はさらに悪化して各球団の経営まで直撃する。そして、日本時間27日に行われた両者の話し合いで、経営者側から新たな年俸削減案が示されたという。今度は年俸の金額に応じて削減したいとするものだ。

 現地のスポーツ専門局ESPNが報じた案によれば、年俸の多寡によって削減の割合は異なり、高給取りほど厳しい。例えば現役最高年俸のM・トラウト選手(エンゼルス)の場合は約3800万ドル(約40億7000万円)から約85%減の577万ドル(約6億2000万円)に。日本人選手ではヤンキースの田中将大投手は2300万ドル(約24億6100万円)が349万ドル(約3億7300万円)と、20億円近い減額。年俸の低いエンゼルスの大谷翔平選手でも70万ドル(約7500万円)が26万ドル(約2800万円)までカットされることになる。

 一時は労使で収益折半の上、7月4日の米・独立記念日に開幕でゴーサインが灯ったかに見えたが、新提案には早速、選手の一部が猛反発。このままでは着地点が見つかるのか、しばらくは混迷の時間が続きそうだ。

 では、労使間の年俸削減問題は日本にとって対岸の火事なのだろうか?


日本流とアメリカ流!?


 メジャーが通常の162試合から半減近い82試合を想定するのに対してNPBは143試合から120試合消化の見込みながら、共に当初は無観客試合が避けられない。その後もコロナ対策として一定の基準を設けた観客誘導となれば超満員も考えられない。日本球界の一般的な経営基盤は観客動員とグッズ類の販売で50%近い収益を見込んでいる。ここが根底から崩れれば経営の根幹に問題が生じるのは自明の理だ。

 「今のところ、そういうことは考えていない」と斉藤惇コミッショナーは今月22日の12球団代表者会議後に否定的な考えを示したが、オーナー会議の席では話題として取り上げられている。

 戦闘を開始する前に条件面を明確化する米国流と、この先の問題として先送りする?日本流。どちらが正しいと結論を出すつもりはない。しかし、決定のスピードが遅かったり、責任の所在が不確定なのは、我が国の特性のひとつなのかも知れない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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