驚異的な通算勝率を誇る斉藤和巳
インタビュー等の場では、ほとんどの投手が「チームの勝利が最優先」と語り、自身の勝ち星にはこだわらない姿勢を見せるもの。とはいえ、勝ち星がつくことも当然重要。自身に勝ち星がつくことは、そのままチームが勝利したことになるからだ。
もちろん、勝ち星はチーム全体の戦力の他、「運」にも左右される。投球内容はよくなくとも、打線の援護に恵まれて勝ち星が転がり込んでくることもあれば、あるいは黒星を消してもらうこともある。そういった勝ち運さえ呼び込める「負けない投手」は、長いペナントレースを戦う上で貴重な存在だ。
かつてなら、それこそ「負けないエース」と呼ばれたのが斉藤和巳(元ソフトバンク)だ。一軍に定着して以降の8シーズンで3度のシーズン最高勝率に輝いた斉藤。その通算勝率は、.775(79勝23敗)と驚異的なものである。近年なら、楽天時代の2013年に24勝0敗、シーズン勝率10割という金字塔を打ち立てた田中将大(米ヤンキース)を思い浮かべる人も多いだろう。
ここでは、NPB所属の現役投手のうち、通算投球回上位20人における通算勝率で「負けない投手」ランキングを見てみたい。
【「負けない投手」ランキング】※NPBでの成績に限る
1位 和田 毅(ソ) .650(130勝 70敗)
2位 菅野智之(巨) .649( 87勝 47敗)
3位 松坂大輔(西) .637(114勝 65敗)
4位 吉見一起(中) .622( 89勝 54敗)
5位 岩隈久志(巨) .608(107勝 69敗)
6位 金子弌大(日) .601(128勝 85敗)
7位 岸 孝之(楽) .598(125勝 84敗)
8位 内海哲也(西) .568(133勝101敗)
9位 中田賢一(神) .565(100勝 77敗)
10位 則本昂大(楽) .559( 80勝 63敗)
和田毅が菅野智之をかわしてトップ
トップになったのは、勝率.650(130勝70敗)の和田毅(ソフトバンク)。メジャーに挑戦して日本球界に復帰した2016年に勝率.750(15勝5敗)でいきなり最高勝率のタイトルを獲得するなど、まさしく「負けない投手」だ。
ちなみに、.650という数字は、NPBが公表している「2000投球回以上」の投手における歴代通算勝率ランキングで4位に相当する。現在、和田のNPB通算投球回は1712回1/3。順調に投球できれば、2000投球回には数シーズンで到達できる。
2018年以降は肩の痛みとの戦いを続けている和田だが、新型コロナウイルスの影響によって開幕が延期されるなか、「肩がもとに戻った」と、調整が万全であることを明かしている。チーム最年長の「負けない投球術」に今季も注目したい。
和田とわずかな差で2位となったのが菅野智之(巨人)だ。その勝率は.649(87勝47敗)。菅野といえば、打線の援護に恵まれなかったり中継ぎ陣に勝ち星を消されたりしたことで、防御率は1点台ながら10勝11敗と負け越した2015年には、勝ち運どころか「負け運がついている」ともいわれた。
それでも、プロ7シーズンで負け越したシーズンはその年のみ。日本球界のエースらしい数字を誇っている。菅野ら「負けない投手」の活躍が見られるのも、もう間もなくだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)