コラム

特別な場所「甲子園」の凄さを改めて考える【スタンバイ・ベースボール】

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阪神甲子園球場 (C)KYODO NEWS

異例の甲子園交流試合開催が決定


 2020年6月11日。野球ファンにとっては、今年に入って最もうれしい一日になったのではないだろうか?

 夏の高校野球が甲子園に戻って来る。日本高野連は本年8月、春のセンバツ、夏の選手権大会中止の代替大会として異例の交流試合開催を発表した。

 3月に行われる予定だったセンバツの出場予定32校を甲子園に招待、いつものトーナメント方式から1校1試合の変則方式ながら、高校球児たちに“聖地”の土を踏ませてやりたいという関係者の願いが何とか形になった。

 朗報はニュースのトップで扱われたほど。春・夏の全国大会中止に涙した球児たちが喜び、飛び跳ねる様に、こちらまでホッとした気分になったファンも多かったのではないだろうか。


引き続き検討課題も


 「日本高野連の挑戦であり、新たな挑戦に向かう球児へのメッセージ」と、同連盟の八田英二会長は言う。新型コロナウイルスの脅威は未だに解消されたわけではない。各都道府県レベルの高野連でも夏の地方大会開催の道を模索しているが、遠征や応援によるリスクなどを考えると全国大会はさらにハードルが高くなる。

 今回の交流試合でも「日程は2回に分けて6日間」「抽選はオンラインにする」「宿泊は試合前日と当日の2泊を原則として近隣校は日帰りも」など、感染リスクを抑える工夫がされている。一方でベンチ入り選手は通常の甲子園大会より2人増の20人とするなど、特別な年への配慮もうかがえる。

 今後の検討課題とされているのが無観客問題だ。学校関係者の入場は感染状況の推移により検討とされている。だが、個人的意見としては、控え部員に応援団や選手の父兄あたりまでは球場に足を運べないか。

 政府のガイドラインによれば大型イベントの場合、「三密」対策を施して最大、施設の50%までの入場を許容範囲としている。7月4日に再開するサッカーのJリーグでは観客を入れる方針であり、当面無観客で開幕するプロ野球も同様な道を模索している。甲子園なら50%とは言わず5000人、すなわち1校に最大2500人でもいい。

 台湾や韓国のスタンドではチアガールが一定の距離を置いて、マスク着用で応援している。父兄は外野席で見守ればいい。遠方からの移動のリスクは選手同様、極力バスを使用。それも台数を増やして密を避ける工夫は出来る。1日3試合で試合ごとの清掃は必須だが、これも控え部員や近隣の協力校を募れば無理ではない。せっかく球児たちに最高のギフトを贈るなら、さらなる英知を期待したい。


「甲子園」の持つ魅力と魔力


 球児たちの交流戦実現の前には、阪神と甲子園球場からも粋なプレゼントが発表されている。こちらは全国の高校野球部員に「甲子園の土」が入った特製キーホルダーを贈るもの。5月中旬から監督、選手らで「何か出来ることはないか?」と協議を重ね、このアイデアに球団、球場、そして高野連も賛同して実現に至った。

 今回の一連の報道を受け、改めて「甲子園」の持つ魅力と魔力について考えさせられた。もちろん、高校球児が憧れの聖地で青春を完全燃焼させる姿は見る者の心を揺さぶる。だが、それだけではない。

 3年間控え部員で終わった者も、野球部員でなくても母校の応援に駆け付ける者などのスタンド風景。さらに「甲子園マニア」と呼ばれる人たちは午前5時、6時から入場門に並び、数十年前のヒーローたちの思い出話に花を咲かせる。そこには100年以上の歴史が息づいている。

 プロにとっても甲子園は特別な場所だ。多くの選手が甲子園に憧れ、甲子園で一喜一憂した思い出が詰まっている。そして、タイガースの熱烈応援。ファンでなくても一度は訪れたい球場である。

 コロナ禍に悩まされる中で生まれる球児たちの交流戦。甲子園にまた新たな歴史の1ページが加わる。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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