コラム 2020.06.19. 07:00

異例ずくめのシーズンが始まる【スタンバイ・ベースボール】

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巨人の本拠地・東京ドーム

順位予想が当たらない理由


 開幕直前、各マスコミでは毎年恒例の順位予想が報じられた。

 多くの評論家諸氏の結論はセ・リーグが巨人、パ・リーグはソフトバンクが優勝の大本命というもの。いたって順当な評価である。だが、この手の順位予想はほとんどが外れる。理由は多岐にわたる。


 まず、最大の要因は故障者と新外国人の出来。指揮官が今季の主戦投手として計算する中から必ずと言っていいほど誤算が生じる。その穴を埋められる戦力が揃っていればまだしも、代役が期待外れに終わると勝ち星の計算が立たなくなる。

 3カ月遅れの開幕となった今季も直前になってロッテの西野勇士投手が右肘靱帯損傷で戦列離脱を余儀なくされた。今月10日の対中日戦登板後に違和感を訴えていたが、最悪の結果になった。昨季は2勝ながら防御率2.96と安定した投球で今年は先発ローテーションの一角を任されることが確実視されていただけに井口資仁監督も頭が痛い。代わって岩下大輝投手がローテーション入りすると見られるが快速右腕が、どの程度の働きを見せるか? チームの浮沈にかかってくる。


当面は打高投低に!?


 12日の日本ハム戦でエース健在を見せつけた巨人の菅野智之投手が翌日に「異例のシーズン」について語っている。

「投げた後、かなり肩に張りがあった。今後は状態を探りながら調子を上げていきたい」。

 通常ならキャンプ、オープン戦を経て段階的に肩の調子も上げていく。だが、今年の場合は3月上旬にオープン戦が中断。その後は休養を挟みながら自主トレーニングが続く。一度、ピークに近づけた投球を元に戻して再び作り上げる作業は難しい。

 前述の西野の場合も急ピッチな調整の中で故障が発生した可能性もある。今月の練習試合では大量得点の乱打戦がしばしば見られた。投手陣の調整が手探りとなる分、当面は「打高投低」の現象が見られるかもしれない。


チームの命運を左右する新助っ人


 次にペナント争いのカギを握るのが新外国人選手の働きだ。中でも注目されるのが阪神とオリックスの関西球団。阪神はジャスティン・ボーア、オリックスはアダム・ジョーンズと大物外国人獲得で勝負に出た。共に4番起用が確実で、得点力不足に泣いたチームの救世主になれるか、注目を集めている。

 だが、ボーアの場合には実戦に入ると左腕投手に対して全く打てない弱点を露呈。メジャー通算282発の大砲、アダム・ジョーンズも全盛期ほどの迫力は感じられない。万が一、評判倒れに終わるようだとチームも苦戦は免れないだろう。

 もっとも大物がいるだけで「睨み」がきくケースもある。2013年から14年にかけて楽天に在籍したアンドリュー・ジョーンズ選手もメジャーで2年連続「40本塁打、100打点以上」を記録したスーパースターだった。しかし、日本での成績はパッとしなかったが、彼が打席に立つだけでオーラが違う。結果、多くの四球を選んで星野仙一監督時代のリーグ優勝に貢献した。

 シーズンが始まると、これまで以上に厳しい攻めが増えて来る。弱点の研究も進む。それをはねのけて破壊力を発揮できればチームは生まれ変わる。ペナントレースの勢力図を塗り替えるためにも強力助っ人の出来が今年も左右する。


様々な“新戦力”も


 新戦力の観点から見るとルーキーたちの働きも見逃せない。すでに広島の森下暢仁、DeNA・坂本裕哉、日本ハム・河野竜生各投手が先発ローテーション入りを決めている。彼らもまた、チームに勢いをもたらす存在として欠かせない。

 さらに「復活組」の活躍も要注意だ。日本ハムの場合、昨年はシーズン序盤に首位を快走しながら失速。原因はエースと期待した上沢直之投手が打球を足に当てて戦列離脱、一昨年10勝をマークしたニック・マルティネス投手も故障のため未勝利に終わっている。共に今季は復調気配にあり、二枚のエースが帰ってくれば台風の目以上になる可能性はある。

 コロナ禍の中の開幕。120試合に短縮されたシーズンは無観客の中でスタート、交流戦もオールスターも中止された。セ・リーグはクライマックスシリーズもない。連戦続きの日程は過酷な闘いを生み、まさに異例ずくめのシーズンとなる。

 短期決戦とは言わないが、例年以上にひとつの流れ、大きな波を掴んだチームが突っ走るような気がしてならない。波乱の2020開幕、順位予想はひとまず置いて今年ならではの劇的ドラマに期待しよう。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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