スカウト陣も驚愕!
プロ野球の2020年シーズンが開幕したその翌日、6月20日に開幕したのがルートインBCリーグ(以下、BCリーグ)。昨年のドラフト会議では松岡洸希(桶川西→埼玉武蔵ヒートベアーズ)が西武から3位指名されるなど、育成選手含めて5人の選手がNPB入りを果たしている。
そして、今年も松岡に続く“新星”がBCリーグから出現した。栃木ゴールデンブレーブスのルーキー・石田駿(静清→九州産業大)だ。
男がベールを脱いだのが、リーグ戦初登板となった6月26日の茨城アストロプラネッツ戦。8回から3番手としてマウンドに上がると、2つの三振を奪って三者凡退。完璧なデビューを果たしてみせたのだ。
結果はもちろん、圧巻だったのがその内容である。サイドスローから投げ込むストレートは、栃木球団が計測したスピードガンで最速150キロをマーク。投じた12球のうち10球がストレートだったが、全て147キロ以上の数字を叩き出したのだ。
大学生や社会人を見回しても、これだけスピードのあるサイドスロー投手はなかなかいないだろう。テイクバックの動きが少し大きく、腕が遅れて出てくるのも打者にとっては厄介だ。スタンドには2球団のスカウトが視察に訪れていたが、いずれも石田のボールに興奮冷めやらぬ様子だった。
ほとんど公式戦に投げていない…?
さらに驚かされたのが、男が歩んできた経歴である。
石田が所属していた九州産業大といえば、昨年秋も明治神宮大会に出場しているが、そのベンチ入りメンバーに石田の名前はない。試合後に話を聞いてみると、神宮大会のベンチ入りどころか、大学時代に一度も公式戦での登板はなかったと言うのだ。
故障が理由か、と尋ねたところ、単純に「実力がなかった」からだという。昨年の九州産業大は福森耀真(楽天4位)をはじめ、下級生も含めて力のある投手が揃っていたが、それにしても驚きである。
なお、高校時代も故障が多く、最終学年は「ほとんど投げていない」のだとか。そういった事情もあり、この日がなんと高校1年の秋以来となる“公式戦”のマウンドだったと言う。
大学時代の話を聞くと、4年生になるまでは140キロ程度だったストレートが、最終学年の夏以降に体の使い方を変え、一気に145キロ以上までスピードアップしたという。ただ、公式戦の実績が全くない投手が企業チームへ進むことは当然難しく、BCリーグの門を叩くことになった。
本人はこの日の投球について、「ストレートで押してくことができたので80点くらいです。自分は変化球が課題なので、そこはこれから上げていきたいです」と話してくれた。
この日投げた変化球はスライダーとチェンジアップが1球ずつの合計2球ということもあって、強い印象を残すことはなかった。しかし、この日見せた10球のストレートは、そんな課題が小さいものに感じるくらいの魅力を感じさせた。
この日のようなピッチングを続けることができれば、昨年の松岡と近い順位での指名も十分に考えられる。180センチ・70キロという細身の体を考えても、これからの成長もまだまだ期待することができるだろう。
ドラフト会議まであと約4カ月…。今後の石田のピッチングにぜひ注目してもらいたい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所