コラム 2020.06.30. 11:44

巨人・戸郷は未来のエースが確約?後押しする偉大な先人たちの「ジンクス」

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巨人の戸郷翔征

33年ぶりの大抜擢に応えた20歳


 待ちに待ったプロ野球の開幕からあっという間に1週間が経過。12球団が順調に9試合を消化した中、セ・リーグでは昨季王者の巨人が首位発進を決めている。


 昨年のセ・リーグ三冠投手である山口俊がメジャー挑戦のために退団。今年はその先発陣の再編というところがポイントに挙げられていたが、新加入のエンジェル・サンチェスが2連勝の好スタート。復活を期す菅野智之と田口麗斗にもさっそく白星がつくなど、上々の滑り出しと言っていいだろう。





 そんな中、特に楽しみな一歩目を切ったのが、高卒2年目のハタチ・戸郷翔征だ。昨年はドラフト6位の入団ながらファームで好投を見せ、9月には一軍に昇格。優勝マジック1で迎えた9月21日のDeNA戦でプロ初登板を初先発で飾り、白星こそつかなかったものの力投を見せた。

 最終的には一軍で1試合に登板し、プロ初勝利もマーク。今季は開幕から先発ローテーションに食い込んでいくことが期待される有望株である。


 迎えた2020年、まさかの事態で開幕が延期となるも、難しい自粛期間を乗り越えて開幕ローテのイスを確保。6月23日、開幕4戦目となる広島戦で今季初先発を果たすと、ハタチという年齢を感じさせぬ落ち着いたマウンドさばきで、6回2/3を2失点、被安打4の7奪三振という好投。見事に今季初登板を白星で飾った。

 “球界の盟主”とも称され、かつては大型補強を中心に戦力を整えてきた巨人において、高卒2年目以内の若手投手が開幕ローテに入って活躍を見せるというのは異例の事態。事実、巨人の高卒2年目以内の投手で、開幕6戦目以内に登板をしたのは、1987年の桑田真澄以来で33年ぶりのことだったという。


のちの大投手が続々!勝利すれば大成は間違いなし?


 では、今回の戸郷やかつての桑田のほかにはどんな投手が“大抜擢”に応えてきたのだろうか…。

 調べたのは、2リーグ制になった1950年以降、「巨人の高卒2年目以内の投手」が「開幕6試合(2カード目)いない」に「先発」をしたケース。今年の戸郷を除き、6人が該当した。


▼ 安原達佳
プロ入り年数:2年目
登板日:1955年4月7日(vs.国鉄)
※シーズン3戦目

投球内容:3回 失点2(負)
シーズン成績:12勝8敗 防1.74
通算成績:56勝32敗 防2.71(プロ通算10年)
※野手成績:打率.216 7本塁打 32打点 5盗塁


▼ 義原武敏
プロ入り年数:2年目
登板日:1957年3月31日(vs.国鉄)
※シーズン3戦目

投球内容:6回2/3 失点0(勝)
シーズン成績:7勝3敗 防1.46
通算成績:33勝23敗 防2.05(プロ通算7年)


▼ 柴田 勲
プロ入り年数:1年目
登板日:1962年4月8日(vs.阪神)
※シーズン2戦目

投球内容:4回2/3 失点4(負)
シーズン成績:0勝2敗 防9.82
通算成績:0勝2敗 防9.82(プロ通算20年)
※野手成績:打率.267 194本塁打 708打点 579盗塁


▼ 堀内恒夫
プロ入り年数:1年目
登板日:1966年4月14日(vs.中日)
※シーズン6戦目

投球内容:6回 失点2(勝)
シーズン成績:16勝2敗 防1.39
☆最優秀防御率・最高勝率獲得・新人王・沢村賞
通算成績:203勝139敗6セーブ 防3.27(プロ通算18年)


▼ 松原明夫
プロ入り年数:2年目
登板日:1970年4月16日(vs.広島)
※シーズン4戦目

投球内容:4回1/3 失点2(-)
シーズン成績:0勝3敗 防3.07
通算成績:91勝84敗9セーブ 防3.68(プロ通算14年)
※NPB通算成績のみ


▼ 桑田真澄
プロ入り年数:2年目
登板日:1987年4月14日(vs.ヤクルト)
※シーズン4戦目

投球内容:9回 失点2(勝)
シーズン成績:15勝6敗 防2.17
☆最優秀防御率・最優秀投手・ベストナイン・ゴールデングラブ賞・沢村賞
通算成績:173勝141敗14セーブ 防3.55(プロ通算21年)
※NPB通算成績のみ


 プロ入り間もない時点で先発した堀内恒夫は、のちの名球会入り投手であり、桑田真澄も21年間で通算173勝をマークするなど、巨人を代表するエースに成長。ほかにも、安原達佳と義原武敏は2年目のシーズンにともに防御率1点台という好成績をマークして優勝に貢献している。

 また、甲子園優勝投手として鳴り物入りで入団した柴田勲は投手としては大成しなかったが、外野手にコンバートされ、3年目以降はレギュラーとして定着。V9メンバーの一員になった。

 松原明夫はここまで紹介した5名とは異なり、巨人では花開かずに終わるものの、移籍先の南海や広島ではそれぞれ優勝に貢献。1983年に韓国球界へ渡った際は、三美スーパースターズ(当時)で韓国球界歴代最多となるシーズン30勝を挙げる大活躍も見せた。


 これらの実績を見る限り、高卒2年目以内に巨人の開幕ローテーションに加わることができた選手は、どんなかたちであれ大成する可能性が高いと言える。ましてや、勝ち投手になった3人のうちの2人は、プロ通算で150勝以上を記録しているのだ。

 戸郷にとってはうれしいデータであるが、そのジンクス通り、巨人のエースとなってはばたくことができるか…。今後の投球にも期待がかかる。


文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)

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