鉄壁を誇ったリリーフ陣にまさか…
ストロングポイントが“泣き所”になっている。
開幕3連敗、3カード連続の負け越しと、大きくつまづいてしまった阪神タイガース。近年の課題だった得点力不足に加え、昨年からの“異変”と言えるのは、鉄壁を誇ったリリーフ陣が精彩を欠いていることだ。
戦力面で言えば、昨年42ホールドポイントを挙げたピアース・ジョンソンと、NPB通算96セーブを誇るラファエル・ドリスが揃って退団。代わって、数年前から国際スカウトが追いかけていたジョン・エドワーズをセットアッパー候補として補強し、150キロ超えのツーシームを投じてSNSでも話題になった、元ソフトバンクの“豪腕”ロベルト・スアレスも加わった。
そこに守護神・藤川球児、昨年は防御率1.01と驚異的な安定感を見せつけた岩崎優の顔ぶれで「勝利の方程式」を形成。他にも、ベテランの能見篤史や、飛躍を遂げた守屋功輝らも脇を固め、今年もリーグNo.1の看板に違わぬ顔ぶれを揃えて開幕を迎えていた。
しかし、巨人との開幕戦。1点リードの7回に登板した岩崎が、吉川尚輝に難しい内角直球を仕留められて逆転2ランを浴びると、25日のヤクルト戦では頼みの藤川も、西浦直亨に逆転サヨナラ3ランを被弾。
岩崎はコンディション不良で満足に実戦を積むことができず、藤川も腰の違和感を訴えながら開幕に間に合わせた部分はあったものの、昨季、特に終盤はほとんど見られなかった立て続けの救援失敗だけに、ショックも大きかった。
勝ちパターンだけでなく、開幕から9試合を終えた時点で、2番手以降の投手は誰かが必ず失点。救援防御率は8.46でリーグワーストに沈む。
これまでは、先発が早期降板した試合でも、リリーフ陣が傷口を広げずに粘り、終盤の逆転や勝ち越しで白星をもぎ取っていた。
今年は初の開幕一軍となった谷川昌希、ルーキーの小川一平らがその役を託された。
27日のDeNA戦では、今季初登板の伊藤和雄が1回を無失点に封じた直後、ジェリー・サンズの逆転3ランが飛び出して9年目の苦労人がプロ初勝利を挙げた。これこそがチームの勝ち方のひとつだけに、今後はビハインドで起用される投手のパフォーマンスも浮上のカギになりそうだ。
思い出される、大黒柱の言葉
今季はコロナ禍でチームの活動休止期間を挟むなど異例のシーズン。キャンプから登板を重ねてきた投手たちは、一旦“リセット”を余儀なくされ、現時点でも調整の過程と言えるかもしれない。
夏場へ向けて一気に状態を上げてくる選手も出てくるはず…。そこで思い出すのは、今年1月に藤川が、ここ数年良質な数字を記録し続けるブルペンの陣容について口にした言葉だ。
「力があれば、絶対上がってくるから、いらんことを言う必要はない。だから、(出てくるのは)誰でもいいって言っている。僕がいなくても、(ブルペンは)同じ成績が出ないといけないし、“誰々がいなくても同じ成績が出ないといけない”と言い続けているから、昨年も救援の防御率は1位、一昨年も1位。人が変わっても同じ、背番号と顔はないって言っている」
誰かが抜ければ、他の誰かが穴を埋め、ニューカマーも登場する。競争の世界の“本質”が、タイガースのブルペンにはある。
振り返って見れば、2017年には桑原謙太朗が突如として遅咲きの飛躍を遂げ、2018年まで2年連続で60試合以上に登板。桑原が故障で抜けた昨年も、島本浩也が台頭して欠かせぬ存在になった。
藤川と助っ人、そして能見といった“コア”な部分は不動でも、脇を固めるメンバーは藤川の言う「背番号と顔」を変えながら、ブルペンのクオリティーを保ってきた。
開幕から1週間でエドワーズと守屋が右肩痛で離脱。29日には谷川、福永春吾が二軍降格。代わって30日の中日戦からは望月惇志と馬場皐輔がコールアップされた。
故障者を見ても、近年にない厳しい状況であることは間違いない。島本、桑原らリハビリ組の復活か、それとも新星出現があるのか…。2017年から3年連続で救援防御率リーグトップを堅持する、虎の“伝統”の真価が試される。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)