5本塁打はいずれもゲームの流れを変える一発!
こういうと失礼かもしれないが、現在、セ・リーグの本塁打ランキング上位に少々意外な選手の名がある。ヤクルト・西浦直亨(29)だ。トップは6本塁打の鈴木誠也(広島)。そして、岡本和真(巨人)、宮﨑敏郎(DeNA)、ビシエド(中日)という強打者たちと並び、今季の西浦はすでにリーグ2位の5本塁打をマークしている。
しかも、西浦はまだ30打席に立ったのみ。鈴木、岡本、宮﨑、ビシエドの打席数がそれぞれ60前後ということを思えば、西浦は図抜けたペースで本塁打を量産していることとなる。
ここまでヤクルトの試合はすべて本拠地・神宮球場で行われたものであり、球場の狭さが有利に働いている面もあるかもしれない。それでも、過去6シーズンで通算23本塁打しか記録していない西浦がこれだけ本塁打を量産している背景には、なんらかの進化があるはずだ。
しかも、本塁打を打っている場面が素晴らしい。藤川球児(阪神)の代名詞である直球をとらえた代打逆転サヨナラ3ランにはじまり、2号以降は順に逆転決勝2ラン、同点2ラン、同点ソロ、逆転2ランと、いずれも僅差の場面でゲームの流れを大きく変える一発だった。
実際、西浦が本塁打をマークした試合はすべて、チームが勝利を収めている。現在、ヤクルトが3位に位置しているのも、西浦の貢献いよるところが大きい。
強力打線の得点力を左右するポイントゲッターになれるか
加えて、西浦が好調であることで、ヤクルトは大きな課題を解決できるかもしれない。「三塁手」と「5番打者」の固定という課題だ。リーグ優勝を果たした2015年のヤクルトには、川端慎吾という不動のレギュラー三塁手がいた。しかし、川端が故障や不振により出場機会を減らしている近年は、レギュラーといえる三塁手がいなかった。
今季、その三塁の開幕スタメンとなったのは、若き主砲・村上宗隆。ところが、開幕カードで「5番・中堅手」に抜擢された塩見泰隆の不調などを受け、一塁手の坂口智隆が外野に入る機会もあり、三塁のレギュラー不在という課題は残されたままになるかと思われた。
また、塩見と雄平の不調は、5番打者を固定できないという課題も生みつつあった。1番・坂口からはじまり、山田哲人、青木宣親、村上というヤクルト上位打線は、12球団でもトップクラスの強力なラインアップだ。しかし、いわゆるポイントゲッターである5番で固定されるような選手がいるといないとでは、その得点力は大きくちがってくる。
そこに現れたのが、西浦だ。もちろん、本当の勝負はこれからだろう。長いシーズンのうちには、短期間に意外な選手が本塁打を量産するようなことは決して珍しくない。また、これまでの西浦の課題といえば、ケガの多さや好不調の波の激しさ。とくに今季は過密日程による選手の負担増が懸念されている。
そのなかで、西浦がケガなく好調を維持し、今後も「5番・三塁(遊撃)」として固定されるような活躍を見せられれば、多くの評論家が予想しているヤクルト最下位という下馬評を覆す可能性も十分にあるだろう。
▼ 西浦直亨の今季成績
打率.250(28打数7安打)/5本塁打/12打点
得点圏打率.444(9打数4安打)
文=清家茂樹(せいけ・しげき)