オリックスに現れた救世主
新型コロナウイルスの影響から、今季は120試合制で行われるペナントレース。例年以上に開幕ダッシュが重要視されているが、そのなかで完全に出遅れてしまったのがオリックスである。
開幕カードの対楽天(3連戦)を1勝2敗と負け越すと、迎えた2カード目のロッテ戦(6連戦)はまさかの6連敗。3カード目の西武戦(6連戦)は3勝2敗1分と勝ち越し、現在のところ3連勝中と勢いに乗りつつあるものの、16試合を終えて5勝10敗1分と、借金完済はまだ先だ。
そんなチームの流れを変えたのが、7月1日の試合。開幕から11試合目となる、西武との2回戦。
この日、先発マウンドに登ったのが、プロ6年目の鈴木優。エース・山岡泰輔の離脱によるローテーションの再編のため巡ってきたマウンドだったが、そこで西武先発・今井達也と堂々たる投げ合いを展開。5回を投げて無安打、7奪三振で無失点という圧巻の投球を披露し、チームの連敗を7で止めて見せた。
右腕は都立・雪谷高の出身で、2014年のドラフト9位でオリックスに入団。この日が嬉しいプロ初勝利となり、都立高校から直接プロ入りをした選手では史上初の白星、ということも大きな話題となった。
強豪ひしめく東京都において、都立高はなかなかチャンスがないものの、近年は都立・小山台が2018~2019年と2年続けて夏の東東京予選で決勝まで進出するなど、目覚ましい活躍を見せている。
全国の舞台に出場する機会が少なく、知名度こそ高くないものの、今後も鈴木のような逸材が出てくる可能性は十分にあるだろう。
プロ入りのサンプル自体少なくなるが、都立高校出身選手は他にどんな選手がいただろうか。この機会に振り返ってみたい。
侍ジャパンの一員やドラ1選手も!
ここでは、「2000年以降にプロ入り」した「都立高校出身の選手たち」を調査。なお、今回は都立高校から直接のプロ入りに限らず、大学や社会人などを経てのプロ入りも含めている。
▼ 横川雄介(巨人)
球歴:日野高
ドラフト:2002年・8位
[通算成績] 一軍出場なし
▼ 高江洲拓哉(中日)
球歴:府中工高
ドラフト:2005年・高校生4位
[通算成績] 一軍出場なし
▼ 秋吉 亮(日本ハム)
球歴:足立新田高-中央学院大-パナソニック-ヤクルト-日本ハム
ドラフト:2013年・3位
[通算成績] 342試(356.1回) 20勝22敗62セーブ・75ホールド 防2.70
☆現役
▼ 石川柊太(ソフトバンク)
球歴:総合工科高-創価大
ドラフト:2013年・育1位
[通算成績] 80試(238.1回) 22勝9敗8ホールド 防3.51
☆現役
▼ 鈴木 優(オリックス)
球歴:雪谷高
ドラフト:2014年・9位
[通算成績] 5試(11.2回) 1勝1ホールド 防7.71
☆現役
▼ 佐々木千隼(ロッテ)
球歴:日野高-桜美林大
ドラフト:2016年・1位
[通算成績] 22試(117.1回) 6勝8敗 防3.76
☆現役
20年間でわずか6人という少なさに加え、横山雄介と高江洲拓哉は一軍出場がないまま球界を去った。だが、その他の選手に関しては、今なお現役としてプロの世界で奮闘を見せている。
2013年にヤクルトへ入団した秋吉亮は、サイドスローからの速球を武器にセットアッパー、クローザーとしての地位を確立。入団から6年連続で30試合以上に登板している。2016年にはオールスターゲームの舞台にも立ち、2017年には侍ジャパンの一員として第4回WBCにも出場した。
2013年に育成選手としてソフトバンクに入団した石川柊太は、入団から3年後には支配下登録を勝ち取った。力強いストレートと特徴的なカーブを駆使した投球が魅力で、2018年には先発・中継ぎを兼任しながら13勝をマークしている。
佐々木千隼は、2016年のドラフト会議で5球団が競合したドラフト1位選手。都立高出身の選手がドラフト1位指名を受けたのは、これが初めてのことだった。
まだまだ数は少ないものの、2010年以降は都立高校出身の選手たちが注目を集める存在になってきた。初勝利を挙げたばかりの鈴木をはじめ、これからも「都立の星」が活躍してくれることを願いたい。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)