シーズンプレビュー【NL東地区 編】
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、開幕を見合わせていたメジャーリーグの2020年シーズン。本来の予定から遅れること約4カ月、いよいよ現地時間7月23日(日本時間24日)に開幕が決定。異例の“60試合制シーズン”が、ついに始まる。
というわけで、新シーズンの見どころや注目ポイントを地区ごとにチェックしていこう、というのがこの企画。今回からはナショナル・リーグ編。最初に取り上げるのは東地区だ。
展望の前に、まずは昨年の順位をおさらいしておこう。
【2019・NL東地区順位表】
1位 ブレーブス(97勝65敗)
2位 ナショナルズ(93勝69敗)
3位 メッツ(86勝76敗)
4位 フィリーズ(81勝81敗)
5位 マーリンズ(57勝105敗)
3連覇か、ワールドチャンピオンの意地か…
▼ アトランタ・ブレーブス
2015年の67勝を起点に、昨年まで4年連続で勝利数の上積みに成功しているブレーブス。昨季はナ・リーグで2番目に多い「97勝」を記録し、地区2連覇を達成した。
チームを牽引したのは、2018年の新人王ロナルド・アクーニャ。41本塁打・37盗塁と、2年目のジンクスなどどこ吹く風の大活躍を見せた。今年はマルセル・オスナが加入し、さらに遊撃手のダンズビー・スワンソンがブレイクすれば、リーグ屈指の強力打線が完成する。
投手陣では、マイク・ソロカの成長が大きかった。13勝4敗に防御率2.68という活躍で、ナ・リーグ新人王投票では2番目の支持。通算163勝左腕のコール・ハメルズも新たに加わり、ローテーション3~4番手を担う。救援陣も頭数はそろっており、地区3連覇の可能性は極めて高そうだ。
▼ ワシントン・ナショナルズ
昨年は8年連続となる勝ち越しを果たすと、ワイルドカードから一気に頂点へ。初の栄冠を勝ち取ったナショナルズだが、下馬評はあまり高くない。
野手陣はアンソニー・レンドンの流出は痛いが、フアン・ソトとビクター・ロブレスのさらなる成長に期待。逆に2人が伸び悩むようなら、得点力不足に陥る可能性がある。
投手陣はマックス・シャーザーとスティーブン・ストラスバーグが健在。パトリック・コービンにアニバル・サンチェスと続くローテーションはナ・リーグでも屈指だが、昨年はアキレス腱といわれた救援陣に不安。今年も大幅な補強はなく、先発陣の足を引っ張るだろう。
“2強”をひっくり返すチームは…?
▼ ニューヨーク・メッツ
昨年は86勝を挙げ、3年ぶりとなる勝ち越しシーズンを送ったメッツ。
移籍1年目のロビンソン・カノは自己ワーストの打率.256に終わったが、ルーキーのピート・アロンソが53本塁打を放ち、チームを助けた。2年目のジンクスだけが心配だが、今年も本塁打を量産するようなら、優勝の目も見えてくる。
強みはジェーコブ・デグロムとノア・シンダーガード率いる先発陣。優勝争いのためには、2人のフル回転は絶対条件だ。カノとともに加入した守護神エドウィン・ディアスは、26セーブに防御率5.59と、マリナーズ時代の前年から成績を大きく落としている。先発・救援ともにブレーブスやナショナルズに比べると層は薄く、若手の突き上げが必要となるだろう。
▼ フィラデルフィア・フィリーズ
2011年を最後に勝ち越しシーズンから遠ざかっているフィリーズ。昨季もシーズン終盤に負けが込み、81勝81敗と勝ち越すことができなかった。
期待のブライス・ハーパーは自己ベストの114打点をマークしたが、古巣ナショナルズの世界一に心境は複雑だろう。この悔しさを糧に、MVP級の活躍に期待したい。
投手陣でカギを握るのが、新加入のザック・ウィーラー。2015~16年の2シーズンをケガで棒に振ったが、昨季は自己最多の195.1イニングを記録。イニングイーターとしてフル回転し、防御率3点台なら、フィリーズには大きなプラスとなるだろう。
▼ マイアミ・マーリンズ
2018年の98敗から、昨年は105敗まで状況が悪化したマーリンズ。数年前にイチローが所属していたため、日本でも馴染み深いチームの一つだったが、当時のメンバーはほぼ残っていない状況だ。
新加入組では、一塁手のヘスス・アギラに期待がかかる。昨季は12本塁打に終わったが、2年前には35本塁打を記録した大砲。貧打線解消に、アギラの復活は必要不可欠だ。
春先のオープン戦では、12勝6敗と大きく勝ち越しに成功。その要因の一つが、投手陣の頑張りだった。防御率3.16は30球団で1位。レギュラーシーズンでこの数字を維持することは考え難いものの、若手を中心に投手陣は整備されつつある。
【まとめ】
90勝超えの2チームに注目が集まるこの地区だが、昨年もマーリンズ以外の4チームが勝率5割以上をマーク。今季も同じ4チームに優勝のチャンスがあると見ていいだろう。
層の厚さでブレーブスの3連覇が濃厚とみるが、フィリーズもハーパーの大爆発次第ではチャンス。特に今年は短縮シーズンで行われる異例の戦いとなるだけに、スタートから最後まで目が離せない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)