無給覚悟の決断
現地時間23日(日本時間24日)、ついに幕を開けるメジャーリーグの2020年シーズン。当初の予定から遅れること4カ月…ようやく待ちに待った球春到来を迎える。
今なお全米各地で新型コロナウイルスの感染が拡大しているなか、今季のレギュラーシーズンは通常より102試合も少ない、『60試合』に短縮される異例のシーズンとなる。
18日には、新型コロナウイルスに感染していたマリナーズの平野佳寿が、キャンプ再開後はじめてチームに合流。6月下旬に感染が判明してから、2度の『陰性』が出るまでに1カ月近くも要した。本人は「症状自体は軽く、身体は至って元気です」とSNSでファンに報告。感染が開幕前だったのも、不幸中の幸いだったと言えるだろう。
メジャーリーグ機構と選手会は17日、直前の1週間で1万548件の検体から、選手5名とスタッフ1名に陽性反応があったことを発表。6月下旬の段階では、1週間で約40名の感染が判明していたことを思えば、ここに来て感染者の数はやや減少傾向にある。
それでも、“コロナ禍”におけるプレーに不安を抱き、今季の『欠場』を決めている選手も多い。中にはチームの戦力に多大な影響を及ぼす大物も含まれており、こうした要素がそのままチャンピオンリングの行方に直結する可能性も大いにある。
世界一への近道は「感染対策」!?
有名どころでは、ドジャースのデビッド・プライスと、ジャイアンツのバスター・ポージーの2人が今季の『欠場』を表明している。
今季からドジャースにやってきたプライスは、「家族やドジャースと話し合い、今季はプレーしないことが自分と家族の健康にとって最善だという結論を出した」と、決断に至った経緯を説明。また、ポージーは「養子縁組で新生児の双子が家族に加わった」ことを欠場の理由に挙げた。
この他にも、ナショナルズのライアン・ジマーマンや、ダイヤモンドバックスのマイク・リーク、ブレーブスのフェリックス・ヘルナンデスらが、「家族の健康」などを理由に欠場を表明している。しかし、一流選手だからこそ、失う物も大きい。
MLBが「重症化のリスクが高い」と判断した選手であれば、欠場を選択しても年俸と登録日数は保証される。ところが、上で挙げた選手のほとんどはこれに該当しない。彼らは数億円、なかには十数億円という年俸を受け取らないという決断を下したということになる。
主力組の“自主欠場”は、ペナントにも影響を及ぼすことは間違いない。さらに今後、メジャーリーガーの感染者が増加するようなことがあれば、開幕してから『欠場』を選択する選手がさらに増える可能性もある。そうなると、各チームの戦力バランスは一気に崩れ、地区優勝争いにも影響が出てくるだろう。
そして、万が一、チーム内でクラスターが発生するようなことがあれば、そのチームは試合開催の危機に直面することも考えられる。今季は、新型コロナウイルスの感染防止対策をしっかり講じることができたチームが世界一に近づく…?そんな異例のシーズンになるかもしれない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)