コラム

「発展途上」のチームに青木、坂口らベテラン勢の力【夢追うツバメたち】

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ヤクルト・青木宣親

第2回:ベテランの「戦う姿勢」

 
 神宮球場にヤクルトファンの姿が帰ってきた。7月24日の巨人戦から、今季初めて本拠地での有観客試合を行った高津ヤクルト。指揮官は「拍手だけの応援というのは新しく、斬新な気分でプレーすることができました」と振り返った。

 野手のひとつひとつのプレー、投手の1球1球に拍手が送られ、これまでの神宮とは違う雰囲気を醸し出していた。それでも、名物の「東京音頭」は今季も健在。25日には、プロ15年目の32歳・川端慎吾が、5-5の同点で迎えた9回一死満塁の好機に代打で登場。レフトへの鮮やかなサヨナラ適時打で試合を決め、神宮のスタンドに傘の花が開いた。

 「今年、春のキャンプも行けずにずっとリハビリを続けてきたんですけど、やっとここまで来られて、ここのお立ち台に立てているのが不思議で仕方ないです」と語った川端は、ツバメ党からの拍手を一身に浴びた。

 首位・巨人に離されないためにも大事な一戦だった。今年1月に腰の手術を受け復活を目指してきた15年の首位打者が、チームに価値ある勝利をもたらした。

 この試合、先発の小川泰弘が初回に1点を先制されたものの、青木宣親の2ランですぐに逆転。小川は7回3失点の内容で試合をつくったが、8回に清水昇、9回に抑えの石山泰稚がそれぞれ失点し、同点に追いつかれてしまった。

 しかし、ここで意気消沈しないのが、いまのヤクルト。同点にされた直後、初回に逆転2ランを放った青木が先頭打者としてセンターへ二塁打を放ち、チャンスメイク。38歳のベテランが「戦う姿勢」を体現し、川端のサヨナラ殊勲打を呼び込んだ。


チームを引っ張る青木、坂口


 高津監督は「粘り強さとか、つなぐ意識とか、絶対に諦めないという気持ちは出てきたかなと思う」と、これまでのチーム状況を語っている。その「絶対に諦めない気持ち」は、ベテラン勢の活躍を見てもわかる。第2回は、ベテラン選手に注目してみた。

 キャプテンとしてチームを引っ張る青木は「チームとして優勝すること。CSがないので優勝して日本シリーズに」と目標を掲げている。ベンチから仲間を鼓舞する姿は、もはや当たり前の光景となった。

 青木はここまでチームトップタイの6本塁打を放ち、横浜スタジアムで行われた7月21日のDeNA戦では初回に先制2ラン。5回にはセンターへ適時二塁打を放ち、4打数2安打4打点と活躍。先発・原樹理に415日ぶりの勝利をプレゼントし「個人的にも柱になってほしい投手。勝ちをつけられて嬉しい」と喜びを口にした。

 また、29日の阪神戦では日米通算2400安打を達成。打率はここまで「.330」と好調をキープしている。稀代のヒットマンは衰えを知らない。


 プロ18年目を迎えた坂口智隆も、開幕からリードオフマンとして欠かせない存在だ。高津監督は「キーだと思ったのが(山田)哲人の前を打つ1番バッター。坂口が入ってくれることが一番いいなと思って今年キャンプに入った」と期待を寄せ、ここまで四球数はリーグ2位の24個、出塁率は.372をマークし、中軸につなぐ働きを担っている。

 頼れる36歳は不屈の魂で試合に臨む。26日の試合では初回に5点を先制されながらも、直後に巨人先発・桜井の初球を振り抜き先頭打者アーチ。試合には敗れたが、4打数2安打1打点と気を吐いた。

 青木も坂口も、ときにはスタメンから外れてベンチスタートというケースもある。休養を挟みながらコンディションを整え、試合展開によっては代打で登場してチームに勢いをもたらしている。


36歳・井野、34歳・山中も健在


 目立たずとも献身的にチームを支えているのが、プロ15年目の井野卓だ。正捕手の中村悠平と嶋基宏が共にケガで離脱している中、36歳のベテラン捕手は、西田明央や古賀優大らとの併用で起用されている。

 ドラフト2位ルーキー・吉田大喜が先発した2試合ではスタメンマスクを被り、若い右腕の女房役を担った。終盤に途中出場する「抑え捕手」としての役割もこなし、熟練のリードで投手陣を引っ張っている。

 8月2日の中日戦(ナゴヤドーム)で今季初登板を果たし、好投したのが34歳のサブマリン・山中浩史だ。昨季0勝に終わった男は、チームの同一カード3連敗阻止に向けマウンドへ。緩急をつけた投球で中日打線を翻弄し、8回まで無失点。白星こそつかなかったが、健在ぶりをアピールした。

 15年には6勝2敗という成績でリーグ優勝に貢献。先発陣が足りないチーム状況だけに、右腕の力投は今後の明るい材料となった。

 若手や中堅の選手たちが成長していく過程で、ベテランの経験と力はここぞというときに勇気を与えてくれる。主砲の山田哲人が上半身のコンディション不良で出場選手登録を抹消されているだけに、彼らの存在は頼もしく映る。

 20失点で大敗した阪神戦の試合後、高津監督は「反省して検証して次に生かさないといけない」と述べた。発展途上のチームは、これから多くの経験を積みながら成長していくことだろう。8月に入り、今後も熾烈な戦いが続くが、ベテラン勢がチームに「諦めない精神」を植えつけてくれるはずだ。


文=別府勉(べっぷ・つとむ)
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