コラム 2020.08.06. 19:15

巨人・高梨雄平 突如現れたスーパーリリーバー【バイプレーヤーたちの夏】

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巨人・高梨 (C) Kyodo News

「バイプレーヤーたちの夏」


 巨人の菅野智之投手やソフトバンクの柳田悠岐選手のようなスーパースターが放つ輝きはないかもしれない。だが、チームには縁の下の力持ち的な存在が必要不可欠だ。

 日頃、テレビのヒーローインタビューやスポーツ紙の見出しを飾ることはなくても、こつこつと汗を流す脇役を「バイプレーヤー」と呼ぶ。ある者は一軍と二軍との壁に苦闘し、ある者は主役を食ってしまうほどの存在感を発揮する。今月は、そんな彼らの“明日なき戦い”を追ってみる。


第1回:巨人・高梨雄平


 巨人・宮本和知投手チーフコーチの舌の回転が絶好調だ。

 7月5日の阪神戦でプロ2年目・戸郷翔征投手が早くも4勝目を挙げた試合後には「TO GOキャンペーン中」と、政府の観光支援事業「GO TOトラベルキャンペーン」とひっかけて軽口。以前にも強力中継ぎ陣を形成する大江竜聖、高梨雄平、田中豊樹投手らの頭文字から「OTT」「TOT」(オットトット)と命名してその活躍に目を細めた。

 一時はタレント業に転身したこともある宮本コーチだからサービス精神はお手の物だが、チームは首位を快走、中でもシーズン前には不安視されていた投手陣が12球団で随一の安定感を誇っているのだから笑いもジョークも止まらない。

 その中でも獅子奮迅の働きを見せているのが、貴重な中継ぎ左腕として突如現れた高梨である。先月14日に将来の有望株と目された高田萌生投手とのトレードで楽天から移籍。わずか4日後の18日、中日戦で救援登板すると快進撃が始まった。

 投げるたびにヒットすら許さない無失点投球が続く。9試合目となった今月5日の阪神戦で近本光司選手にバント安打を許してノーヒット記録はついえたが、いまだに無失点は続き防御率は当然ながら「0.00」だ。

 開幕前、巨人の不安材料に弱体投手陣を指摘する声は多かった。昨年の最多勝男・山口俊が米国に渡り、新外国人のA・サンチェス投手もオープン戦では打ち込まれて、計算の立つ先発は菅野一人だけ。抑えでもシーズン序盤でR・デラロサ投手が故障で離脱、代役に指名された沢村拓一投手も信頼に応えられずと心もとない台所事情だった。

 ところが、いざふたを開けると先発陣では戸郷や田口麗斗投手らの若手が台頭、抑えには中川皓太投手が定着する。さらに強力投手陣の決め手となったのが高梨、大江に大竹寛や鍵谷陽平投手らを加えた中継ぎ陣の完成だ。ちなみにこの4投手の内、3人は移籍組。改めて巨人というチームの勝利へのどん欲さを感じる。

 加えて楽天とは高梨の前にZ・ウィーラーと池田駿投手とのトレードも成立させている。そのウィーラーが3割近い打撃で首脳陣の信頼を勝ち取れば、高梨も完璧なゼロ行進なのだから原辰徳監督のほくそ笑む姿が容易に想像される。


波乱万丈の野球人生


 今でこそ中継ぎのエース格と評される高梨だが、これまでの野球人生は波乱万丈だ。早大時代は1年から神宮で活躍、3年春のシーズンでは東大相手に六大学史上3人目となる完全試合を達成している。しかし、4年になると左肩痛にイップスまで抱えて出番はなくなった。

 社会人のJX・ENEOSでは鳴かず飛ばずのまま2年間で退部が内定していたという。最後に取り組んだサイドスローのクセ球が楽天スカウトの目に止まりドラフト9位で入団にこぎつけた。

 楽天では2年目となる18年には球団史上最多の70試合に登板、オフの日米野球で代表にも選出されている。だが、昨年は急性虫垂炎で戦列を離れ、今季は三木肇新監督の方針で「左対左」のワンポイント起用にこだわらず、長いイニングを任す「第2先発方式」を採用する中で出番を失い、二軍暮らしが続いていた。トレードは時に野球人の運命まで変える。

 変則左腕と言われる高梨の投法には大きな武器が隠されている。他の投手に比べてテークバックが小さく、投げる直前まで腕が体に隠れるので打者にとってはタイミングがとりづらい。しかもテンポよくストライクを先行させていけるので左に限らず右打者でも通用する。

 もちろん、このままゼロ行進が続くわけはない。相手の研究が進めば打ち込まれる時もやってくるだろう。だが、新天地でつかんだ自信と信頼は高梨にとって何よりの財産となった。来る日も来る日もブルペンで待機して、勝負のマウンドは一瞬だ。それでも大事な場面を任されて、拍手でベンチに迎えられる充実感は何物にも代えがたい。

 首位巨人を裏で支える“影のMVP”と言っても過言ではないだろう。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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