大谷翔平の再来か…?
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、残念ながら今年の全国高校野球選手権および代表校を決める地方大会は中止となってしまった。それでも、各地で代替大会が行われ、プロ入りを目指す選手のアピールは続いている。
プロアマ野球研究所(PABBlab)では、そんな代替大会で活躍が光った選手についても積極的に紹介していきたい。
今回は規格外のスケールを誇る二刀流選手を取り上げる。
ベールに包まれた超大型選手
メジャーで活躍する大谷翔平(エンゼルス/193センチ)をはじめ、NPBでも藤浪晋太郎(阪神/197センチ)や椎野新(ソフトバンク/196センチ)、国吉佑樹(DeNA/196センチ)など、身長190センチを超える選手は珍しくなくなっているが、今年の高校球界には彼らを超える超大型のドラフト候補が存在している。
それが、身長2メートルを誇る二松学舎大付の秋広優人だ。
東東京でも屈指の強豪である二松学舎大付だが、昨年秋の都大会では1回戦で明大中野八王子に敗れたこともあってアピールの機会は少なく、この夏に一気に浮上してきた格好だ。そんなベールに包まれた超大型選手の実力を確かめるべく、東東京大会・2回戦の東京成徳大高戦に足を運んだ。
秋広は今大会背番号3を背負い、一塁手と投手を兼任しているが、この日は「4番・投手」で先発出場。ワインドアップモーションで振りかぶると、ネット裏のスタンドから見ていてもなかなか見たことのない迫力を感じる。当然、バッターボックスからはさらに大きく見えることは間違いなく、それだけで打者に対してアドバンテージがあると言えるだろう。
フォーム自体は軸足にしっかりと体重が乗り切る前にステップしているように見え、投げ終わった後に体が一塁側に流れるなど、大型投手らしい不安定さがまず目についた。体の割れも不十分で、腕の振りもまだまだ力強さには欠けるという印象だ。
その一方で、上手く上半身の力を抜いて楽に腕を振り、軽く投げているようでも角度のあるボールを低めに集めることができていた。最終的には4回を投げて被安打2、四死球0、4奪三振としっかり試合を作って見せた。
この日の最速は142キロ。アベレージは130キロ台後半と特筆すべきものではないが、軽く腕を振れるフォームとスピードにギャップがあるため、ストレートに差し込まれる打者が多かった。
打者では俊足強打、スカウト陣も“高評価”
秋広の魅力はピッチングだけではない。打者としても2本の二塁打を放ち、4番としての役割をしっかり果たしている。
バッティングもピッチングと同様に力強さはあまり感じられず、内角のストレートに少し窮屈なスイングになるなどの課題はあるものの、それでもしっかり振り切ってヒットにできるのは大きな長所である。続く3回戦では本塁打も放っているが、芯でとらえた時の飛距離も申し分ない。
この日の第2打席で放ったセンター右への当たりでは、一塁を回ったところから急加速してセカンドベースを陥れたが、この時の二塁到達タイムは8.12秒をマーク。これは十分俊足と呼べるレベルで、打った直後から全力疾走していれば、7秒台を叩き出していた可能性も高いだろう。2メートルの長身でこのスピードは大きな魅力である。
秋広のピッチング・バッティング両方に共通しているところは、体の使い方の上手さである。今年の大学4年生には今西拓弥(早稲田大)という同じ2メートルの長身左腕がいるが、その今西と比べても動きがスムーズであり、身のこなしの軽さも明らかに秋広が上回っていた。
あるプロ球団のスカウトは、秋広について「2メートルの身長があって投手か野手か迷えるだけで大きな才能」と評していたが、今までにいないスケールとセンスを併せ持った選手であることは間違いない。
この上背に見合うだけの筋力、力強さがついてきた時に、果たしてどのようなボールを投げ、どのような打球を打つようになるのか。投手、野手どちらの道を選んだとしても楽しみは広がるばかりだ。
☆記事提供:プロアマ野球研究所