六大学リーグの注目株
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、高校野球だけではなく大学野球も大きな影響を受けている。
例年6月に行われている『全日本大学野球選手権』は中止となり、春のリーグ戦もほとんどの試合が行われなかった。
秋のリーグ戦に向けてようやくこの夏は試合が増えてきているが、プロアマ野球研究所(PABBlab)では、そんな中で活躍が光った選手について積極的に紹介していきたい。
今回は東京六大学で最終学年に急浮上してきた“快速右腕”だ。
自慢のストレートで早大打線をねじ伏せる
8月10日から各大学一戦総当たりで行われた、東京六大学野球の春季リーグ戦。
今年は早川隆久(木更津総合→早稲田大)、木沢尚文(慶応→慶応大)など、上位候補が多い印象だが、そんな中で浮上してきたのが高田孝一(平塚学園→法政大)である。
平塚学園では早くから主戦となり、1年秋には先日プロ初勝利を挙げた吉田凌(東海大相模→オリックス)と投げ合って延長12回を1失点で完投勝利をおさめるなど、県内では注目されていた投手だ。
しかし、法政大進学後も2年から先発を任されたが、もうひとつ安定感に欠ける印象が強かった。そんな高田が変わってきたのが、昨年の秋からだ。
見るからに体つきが大きくなり、スピードもアップ。昨年10月6日に行われた明治とのカードを現地で見たが、最速は148キロを計測。後のドラフト会議でDeNAに3位で指名を受ける伊勢大夢に投げ勝っている。
そしてこの春、高田はさらなるスケールアップを遂げていた。
8月12日に行われた早稲田大との試合に先発すると、立ち上がりから150キロを超えるスピードを連発。6回1/3を投げて1失点の内容でしっかりと試合を作り、チームのサヨナラ勝ちに大きく貢献している。
特筆すべきはストレートの“割合の多さ”だ。
この日、高田が投じた投球数は114球だったが、そのうち66球がストレートで、比率にすると57.9%となる。ちなみに、この前の試合には木沢も登板して115球を投げているが、ストレートは33球で比率は高田の約半分の28.7%だった。
もちろん、ストレートが多ければ良いというものではないが、いかに高田がストレートで早稲田大打線を押し込んでいたかがよく分かる。
秋次第ではドラフト上位候補に…?
さらに凄みを感じるのが、ストレートの“アベレージの速さ”である。
この日の最速は151キロだったが、66球のうち150キロを超えるボールは19球あり、145キロ以上となると実に64球に及んだ。
66球全体の平均球速は「148.0キロ」。これはプロの先発投手の中でも間違いなく上位の数字である。高校時代はどちらかというとセンスの光る投手だっただけに、ここまでのパワーピッチャーに変貌したのは驚きだ。
ここまではストレートのデータを紹介してきたが、変化球も決してレベルが低いわけではない。
スライダーはカウントをとるボールと勝負球をしっかり投げ分けており、特に左打者の膝元のボールは空振りを奪えるだけの鋭さがあった。
また、フォークも低めに集めるなど、全体的なコントロールも安定している。ストレートが走らない日は、変化球中心のピッチングで試合を組み立てるだけの実力を十分に備えていると言えるだろう。
冒頭で触れた早川や木沢と比べると、ここまで上位候補という声は聞こえてこないが、このリーグ戦でのピッチングは決して大きく見劣りするものではない。9月から始まる秋のリーグ戦の出来次第では、上位候補という声が聞こえてくる可能性も十分にありそうだ。
最終シーズンでのピッチングにもぜひ注目してもらいたい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所