第3回:ツバメ投手陣を支えてきた19年目の左腕
プロ入りしてから18年間、小さな体で毎年勝ち続けてきた。ヤクルトの石川雅規だ。不惑の左腕は19年目のシーズンを迎えている。
今年、自身9度目となる開幕投手を託された。開幕戦は中日打線を相手に5回3失点と粘投。勝ち投手の権利を得てマウンドを降りたが、リリーフ陣がつかまって逆転される。勝てば40代の開幕投手としては30年ぶりだったが、快挙達成はならなかった。
勝てない日々が続いた。6月26日の巨人戦(神宮)では6回1失点と好投したが、9回に守護神の石山泰稚が打たれ、あと少しで白星に手が届かなかった。
その後も2試合勝ち星を挙げられず、7月15日には上半身のコンディション不良で出場選手登録を抹消。「しっかりとケガを直して、一軍で戦える体を」と、約1カ月間ファームで必死に調整してきた。
「今年が始まったという感覚があまりない。喉から手が出るほど勝ちがほしいので、しっかりとチームに勝利を持ってこられるようにやっていきたい」と意気込み、8月25日の巨人戦(神宮)で復帰登板を果たす。
しかし、この日も5回2失点と粘りの投球を見せながら、またも今季初勝利を手にすることはできなかった。
「生かすも殺すも自分次第」
石川がファームで過ごしてきた期間、高橋奎二や吉田大喜といった若い投手が先発陣の一翼を担った。結果を追い求め投げ込む彼らの姿は、ベテラン石川の目にどのように映ったのだろうか。
「もちろん、みんな結果を出したくて一軍で投げているのはわかるので、やっぱりうまくいく、いかないはあると思いますけど、斎藤コーチ、石井コーチの下ですごく勉強しているなというのはわかります。失敗を次に生かしたピッチングをしているんじゃないかと思う」
40歳の現役最多勝投手は、若手投手陣が成長していく姿を称えながら、こうも述べた。
「生かすも殺すも自分次第だと思う。僕も年を重ねても反省、復習の繰り返しなので、そこをどう捉えるかだと思う」
コーチからの助言、マウンドで味わった悔しさや失敗、さまざまなことを糧にして、これまでツバメ投手陣を支えてきた。
だからこそ、まだまだ若手に負ける訳にはいかない。そんな自負が石川の言葉から感じられる。
「若手をのんびり僕も見ていられる立場ではないので、しっかりと刺激を受けながらやっていきたいなと思います」
見据える先には、大きな目標がある。節目の通算「200勝」という大記録だ。
「1つ勝たないと2つ目がない。大きな目標の200勝というのはありますけど、1つ1つしか近づけないので、今年の初勝利というのを貪欲に狙っていきたいなと思います」
勝利の女神は、必ずや微笑むはずだ。
文=別府勉(べっぷ・つとむ)