苦しむドジャースの主砲
コロナ禍で開幕した今季のメジャーリーグ。コンディショニングの難しさもあってか、開幕から不振に陥り、調子を取り戻せない打者が目立っている。
エンゼルスの大谷翔平もその一人だろう。2年ぶりに二刀流でスタートしたが、投手として2度目の登板で右腕の違和感を訴え、今季残り試合は指名打者に専念することが決まっている。しかし、打率は1割台の低空飛行が続き、なかなか復調の兆しは見えてこない。
一方、ナ・リーグでは昨季MVPを争った2人の長距離砲が極度の不振にあえいでいる。1人目が、自身初のMVPを獲得したドジャースのコディ・ベリンジャーだ。
昨季は156試合に出場して打率.305、本塁打は47、打点も115を記録。主要打撃タイトルこそ獲得できなかったが、ナ・リーグ最多106勝を挙げたチームの主軸としてチームを牽引した。
当然ながら今季もMVP級の働きを期待されたが、開幕からなかなか快音が聞かれず、打率1割台が続いた。7月下旬にようやく2割台に乗せたが、現地8月31日の試合前に背中を痛め、3試合連続で欠場。3日にスタメン復帰を果たしたが、4打数無安打に終わった。
現地3日終了時点でのシーズン成績は、打率.218に本塁打が10、打点は22。持ち前の長打力は発揮しているものの、OPSが昨季の1.035から.762に300ポイント近く低くなっている。
ただし、主砲のバットが湿る中、チームは29勝10敗(勝率.744)と絶好調。両リーグで唯一の勝率7割台を維持している。
ベリンジャーが昨季並みの打棒を取り戻せば、すでにリーグ屈指の打線がさらに破壊力を増すことになるが、閉幕までに復調できるだろうか。
ベリンジャーより深刻…?
昨季ベリンジャーとMVP争ったもう一人の左の大砲が、ブリュワーズのクリスチャン・イエリチだ。
MVP投票では僅差の2位に終わった28歳。昨季は打率.329、本塁打44、打点97に30盗塁のおまけつき。しかし、シーズン終盤に自打球を右膝に当ててしまい、膝蓋骨を骨折…。それがなければ、三冠王の可能性もあっただけに、悔やまれる自打球となった。
復活を期して臨んだ今季は、開幕から大スランプ。7月は6試合で27打数1安打(打率.037)という、にわかに信じ難い数字を残した。
8月に入り、長打の数も増え始めたが、打率は1割台と2割台を行ったり来たり。8月終了時点の打率は.197だった。
現時点でのシーズン成績は打率.205に本塁打が9、打点は17。主要3項目でベリンジャーを下回っている。得点圏打率もちょうど1割と、チャンスでもサッパリ打てず。深刻度はベリンジャー以上と言っていいだろう。
昨季は主要打撃部門で上位を占めたベリンジャーとイエリチ。レギュラーシーズンの閉幕まで1カ月を切ったが、どこまで昨季に近い状態に戻せるだろうか。
今季は60試合制の“短期決戦”だけに、猶予はあまりない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)