リリーフ陣を救う存在
9月も半ばに入り、ペナントレースも残すところ50試合程度。周知の通り、今季は120試合の短縮日程となっており、ここに来て大型連戦も増えてきている。
こうした連戦が続いてくると、負担が大きくなるのはリリーフ陣。毎日のようにブルペンで肩をつくり、登板に備えるというルーティンをこなすだけでも大変なことだが、実際に毎日のように登板するとなれば疲労はさらにたまり、本来のパフォーマンスを発揮することは難しくなる。
そこで、チームにとって貴重な存在となるのが、長いイニングを投げることができる先発投手。いわゆる「イニングイーター」と呼ばれる男たちだ。
6試合連続完投の左腕が僅差の首位!
今季の「イニングイーター」と言えば、みなさんは誰を思い浮かべるだろうか。
ここでは、今季のセ・パ両リーグで「先発登板を5試合以上した」投手の「平均の投球回数」を調査。なお、端数は1/3は「0.3」、2/3は「0.6」とカウントし、『投球回数』÷『先発試合数』で算出している。
まずは、セ・リーグのトップ3から見ていこう。
1位:大野雄大(中日)
【1試合平均:7.2回】
・投球回数:93回2/3
・先発登板:13試合
[今季成績] 5勝5敗 防御率2.59
☆完投6・完封2
2位:菅野智之(巨人)
【1試合平均:7.18回】
・投球回数:93回1/3
・先発登板:13試合
[今季成績] 11勝0敗 防御率1.64
☆完投3・完封3
3位:西 勇輝(阪神)
【1試合平均:7.15】
・投球回数:93回
・先発登板:13試合
[今季成績] 6勝3敗 防御率2.32
☆完投2・完封1
トップ3はいずれも13試合に先発をし、アウト1個ずつしか差がない大接戦。その中で一番上に君臨するのが、中日の大野雄大だ。
勝ち負けこそ五分も、7月31日のヤクルト戦から6試合連続で完投を記録する大活躍。9月15日の広島戦で初回から打ち込まれてしまい、連続完投記録はストップしてしまったものの、ローテーションの大黒柱として存在感を発揮した。
その大野を追うのが、首位を快走する巨人のエース・菅野智之。こちらも大黒柱としてイニングを稼ぎながら、それでいて11勝負けなし、防御率1点台という圧巻の成績を残しているのだから文句のつけようがない。
2人を追いかける阪神・西勇輝も今季は安定した投球が際立っており、13試合に先発してクオリティ・スタート(=QS/6回以上投げて自責点3以内)を記録できなかったのはわずかに1試合だけ。QS率92.31%は、菅野や大野をも上回るリーグトップの好記録である。
“隠れイニングイーター”発見も…
続いて、パ・リーグのトップ3を見ていこう。
1位:山本由伸(オリックス)
【1試合平均:6.82】
・投球回数:88回2/3
・先発登板:13試合
[今季成績] 5勝3敗 防御率2.84
☆完投1
2位:種市篤暉(ロッテ)
【1試合平均:6.66】
・投球回数:46回2/3
・先発登板:7試合
[今季成績] 3勝2敗 防御率3.47
☆完投1・完封1
3位:涌井秀章(楽天)
【1試合平均:6.58】
・投球回数:79回2/3
・先発登板:12試合
[今季成績] 8勝2敗 防御率3.19
☆完投1・完封1
パ・リーグは指名打者制度がなく、代打などの戦略的な交代がないためイニング数は伸びてくるかと思いきや、平均で7イニングを超える投手はなし。
少し意外だったのは、2位にランクインしたロッテの高卒4年目・種市篤暉。8月1日の楽天戦こそ6回途中でマウンドを降りたものの、それまでは欠かさず6イニング以上を消化。今季の飛躍に期待がかかっていた。
しかし、打ち込まれた8月1日の試合後に右肘の違和感で登録抹消となり、9月14日にトミー・ジョン手術を行ったことが明らかに。今季中の復帰は絶望的となってしまった。
当然ながら、過酷な連戦の影響は「イニングイーター」たちにとっても同じ。これまでの蓄積疲労と戦いながら、リリーフ陣を助けるような投球を続けていくことができるか。今後の戦いにおける大きなポイントとなることだろう。
チームのために腕を振り続ける、彼らの奮闘から目が離せない。
▼ セ・パ その他の上位投手
<セ・リーグ>
・髙橋遥人(神)平均 6.67
・小川泰弘(ヤ)平均 6.58
・森下暢仁(広)平均 6.47
・福谷浩司(中)平均 6.47
・野村祐輔(広)平均 6.25
・平良拳太郎(De)平均 6.22
<パ・リーグ>
・上沢直之(日)平均 6.56
・石川 歩(ロ)平均 6.54
・千賀滉大(ソ)平均 6.51
・有原航平(日)平均 6.43
・髙橋光成(西)平均 6.39
・石川柊太(ソ)平均 6.30
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)