北海道で発見!MAX150キロの長身右腕
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、高校野球だけではなく大学野球も大きな影響を受けている。
例年6月に行われている『全日本大学野球選手権』は中止となり、春のリーグ戦もほとんどの試合が行われなかった。
それでも、“運命の一日”は刻一刻と近づいて来ている。プロの舞台を目指す4年生にとっては秋のリーグ戦が最後のアピールの場になるが、プロアマ野球研究所(PABBlab)では、そんな中で活躍が光った選手について積極的に紹介していきたい。
今回は、北海道の大学球界に現れた圧倒的スケール感を誇る“大型右腕”を取り上げる。
大学再入学で才能開花
あまり馴染みがないかもしれないが、北海道の大学野球は北海道学生野球連盟と札幌学生野球連盟という2つのリーグによって行われている。
北海道学生には今年、伊藤大海(苫小牧駒沢大)というドラフト1位候補がいるが、札幌学生にもプロから高い注目を集めている投手がいる。それが今回取り上げる、星槎道都大の河村説人(かわむら・ときと)だ。
白樺学園では、3年夏に甲子園に出場。初戦で敗れたものの、140キロを超えるスピードを記録して注目を集めた。
高校卒業後は亜細亜大に進むも、1年時に退学して星槎道都大に再入学。そこから徐々に登板数を増やし、昨年秋には3勝をマークすると、リーグ戦後に行われた大学日本代表候補合宿にも選出されている。
そんな河村を目当てに、この日の札幌円山球場には9球団・計13人のスカウトがつめかけていた。中にはGM(ゼネラルマネージャー)やスカウト部長が足を運んでいる球団もあり、河村への注目度の高さが垣間見えた。
試合は立ち上がりに味方のエラーからいきなり3点を失う苦しい展開となり、2回以降は立て直したものの、6回にも再び失策絡みで2点を追加され、6回5失点で降板。大事な開幕戦はほろ苦い黒星スタートとなった。
ただし、そんな中でも河村は存在感を発揮。初回、偵察に来ていた北海学園大のスピードガンで最速150キロをマークするなど、才能の片鱗は十分に見せつけたと言える。
典型的な“未完の大器”タイプ
最大の特長は、何と言ってもボールの角度だ。
193センチの長身を誇り、肘を高く上げて真上から腕を振り下ろすことができる。また、比較的重心が高いフォームということもあって、なかなか見慣れない高さからボールがリリースされてくるのもポイントだ。
ネット裏から見ていてもそう感じるということは、バッターボックスから見る打者はそれ以上の角度に見えていることだろう。これだけの角度から、コンスタントに140キロ台中盤をマークする日本人投手というと、プロでもなかなかいないはずだ。
130キロ台で鋭く落ちるフォークボールも持っており、こちらもなかなかお目にかかれないような角度と落差のあるボール。やや変化が早い印象も受けたが、磨けばさらに輝く武器の候補となるだろう。
フォームに関しては、まだまだ課題も多い。
テイクバックで右肩が下がり、体の割れや下半身の粘りも不十分に見える。踏み出した左足でしっかりと体重を支え切ることができず、体が一塁側に流れるのも気になる部分だ。
このように、大型投手にありがちな欠点は漏れなく残していると言えるだろう。それでも、下級生の頃と比べると変化球で腕が振れるようになり、3点を失った後の2回には、全て変化球で三者凡退に打たせてとるなど、力で押す以外の投球ができるようになったのは大きな成長と言える。リリースの感覚も器用で、110キロ程度の緩いカーブと130キロ台前半のカットボールなども面白いボールだった。
大学生投手ではあるが、典型的な“未完の大器”タイプであり、まだまだ覚えることは多い。しかしながら、そんな課題も小さなものに感じてしまうほど、指にかかった時のストレートに魅力があることは確かである。
筋力がアップして、フォームが固まった時には、果たしてどんなボールを投げるようになるのか…。この日訪れたプロのスカウト陣も、そのような期待感を覚えたことは間違いないだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所