第4回:若き4番と「5番打者」
4番の座は、開幕から誰にも譲っていない。
ヤクルトの村上宗隆はここまで打率.335・13本塁打・52打点と堂々の成績を収めている。特に7月は、得点圏打率.471と勝負強さを見せつけた。
2年目の昨季は36本塁打・96打点を挙げて新人王を獲得。迎えた3年目は当然マークも厳しくなり、相手チームが「村上封じ」のシフトを敷く。
それでも、本人は「来た球に対してしっかりスイングすることを意識してやっています」と、気にすることはない。狭い一二塁間に鋭い打球を飛ばし、ヒットにしてしまう。
不動の4番だからこそ、自身の成績が落ちればチームの勝敗に影響してくる。
8月に入ると、得点圏打率は.235と落ち込み、苦しむ場面も見られた。チームも8月は7勝17敗1分けと大きく負け越してしまった。
若き4番を支えるのは…?
弱冠20歳にして乗り越えなければならない、4番としての“宿命”──。そんな村上の負担を和らげる意味でも、すぐ後に控える「5番打者」が打線の大きなカギを握る。
現在、ヤクルトの5番は固定できない状態が続いている。上位打線でチャンスメイクしながら、「あと1本」が出ずに敗れる試合もあり、出塁率.449とリーグトップの4番を生かすためにも、5番を固定したいところだ。
一時首位に躍り出た7月には、7年目の西浦直亨や5年目の山崎晃大朗が主に5番を任せられた。
山崎は7月の月間打率が.329で、得点圏打率も.320とハイアベレージをマーク。好調ぶりを見せた。しかし、8月は打率.219と低迷。得点圏打率も.071と大きく落ち込んでしまった。
西浦に関しては直近2試合で5番を任せられており、9月の得点圏打率は.273。開幕直後は勝負強さを発揮し、6月25日の阪神戦(神宮)では9回二死から逆転サヨナラ3ランを放って、飛躍の予感を漂わせた。再び勢いを取り戻して、5番を不動のものにしたいところだ。
塩見が今季3度目の離脱
思えば開幕前、5番候補に挙げられていたのは、3年目の27歳・塩見泰隆だった。
「5番・中堅」で開幕オーダーに名を連ねたが、当初はなかなか調子が上がらず、6月28日には左手の突き指で離脱してしまう。それでも、7月28日に復帰を果たしたあとは9試合で打率.406、4本塁打と好調をキープした。
8月7日のDeNA戦(神宮)では、「5番・右翼」でスタメン出場。5号2ランを含む4打数2安打・2打点と活躍。このまま塩見が5番で固定されるのか。この時、高津監督は次のように話していた。
「当初、(山田)哲人が2番に入って塩見が5番、というのを開幕の頃は考えていました。長打もある塩見がムネ(村上)の後を打つのは、やっぱり相手も嫌がる形だし、足も使えるということを考えると、いい並びなのかもしれないですね」
指揮官も期待していた矢先、8月12日に今度は上半身のコンディション不良のため2度目の抹消。9月1日に一軍に復帰したが、同14日にまたも上半身のコンディション不良で今季3度目の離脱…。走攻守でポテンシャルの高い選手だけに、歯がゆさが残る。
中山と濱田、期待の2年目
塩見が不在の中、共に2年目外野手の中山翔太と濱田太貴にとっては大きなチャンスとなる。
23歳の中山は9月17日のDeNA戦(神宮)の6回に代打でソロ本塁打を放ち、9月は代打で月間3本塁打をマーク。月間代打本塁打数の球団記録で大杉勝男(76年4月)に並び、持ち前のパワーを見せつけた。
9月4日に20歳になったばかりの濱田も、17日のDeNA戦(神宮)に「1番・右翼」でスタメン出場すると、5回に左中間スタンドへプロ初本塁打となるソロを放つ。この日は7回の二死満塁という場面でもセンターへ2点適時打を放ち、3打点の活躍を見せた。
次代のクリーンアップ候補として期待される濱田は、自身も「いい打順は打ちたい」と話しており、チームの主軸に思いを巡らす。
それでも、「(今は)与えられたことをしたいなと思います」と、任せられた打順でしっかりと結果を残すつもりでいる。一軍に定着し、近い将来、村上とコンビを組む姿が待ち遠しい。
打線のカギを握る5番に誰が定着するのか。若い選手たちによる競争が、チームを活性化させる。楽しみな若手が、ヤクルトにはいる。
文=別府勉(べっぷ・つとむ)