9月に入って巨人・戸郷が失速
今季、注目を集めているセ・リーグの新人王レースでは、広島の森下暢仁投手(23)が巨人の戸郷翔征投手(20)に対して一歩リードした印象がある。
8月には無敗の4戦4勝、防御率0.37という素晴らしい数字を残した戸郷だったが、9月に入って失速し、今月はここまで3試合0勝2敗。9月4日の阪神戦で5失点、9月18日のDeNA戦で6失点とKOされ、月間防御率は「6.11」となっている。9月11日のヤクルト戦では7回1失点と好投したものの、打線の援護に恵まれず、今月はここまで勝利を挙げられていない。
「プロとアマの最大のちがいは、シーズンを通して活躍できる体力にある」ともいわれるが、戸郷の失速は、やはり体力面に要因があるのかもしれない。とはいえ、戸郷はまだ高卒2年目であり、それも当然といえば当然だろう。むしろ、高卒2年目ということを考えれば、ここまでの成績は十分過ぎるほどだ。
一方の森下は、9月4日のDeNA戦でプロ最短となる3回5失点(自責点3)でKOされたものの、その後は立て直し、9月10日のヤクルト戦は7回1失点、9月19日の同カードは7回2失点とそれぞれ好投。ここまで9月の月間成績は3試合1勝0敗、防御率3.18だ。先のDeNA戦で早い回にKOされながらも打線が終盤に追いついたことで負けもつかず、まずまずの数字を残している。
マエケンのような大エースに!
あらためて、現時点におけるふたりのシーズン成績を見てみる。
戸郷:12試合(69回2/3) 7勝4敗(勝率.636) 77奪三振 防御率2.97
森下:12試合(78回2/3) 6勝2敗(勝率.750) 84奪三振 防御率2.40
森下は、防御率リーグ3位、勝率2位、奪三振3位と個人タイトル争いにも参戦。やはり新人王レースでは森下が一歩リードというところだろう。そもそも、戸郷は規定投球回に達していない。この要因には、まだ高卒2年目の戸郷をチームが大事に使っているということの他、巨人の中継ぎ陣が充実しているということもあるだろう。登板試合の多くで100球に達していない戸郷の投球数にもそのことが表れている。
一方の森下の場合、逆に100球未満で降板した試合は、先に触れた3回5失点(自責点3)でKOされた9月4日のDeNA戦のみ。このことに対して、「投げさせ過ぎではないか」と批判する声もある。もちろん、シーズン序盤のような投球数が120球を超える登板が3試合も続くようなことは批判されても仕方がないのかもしれないが、それも登板間隔日数は大きく開けてのこと。
また、そもそも森下が多くの試合でいい投球をしていること、チームの救援防御率が巨人と1点以上の開きがあるリーグワーストという中継ぎ陣の不調を思えば、森下にきっちり勝ちをつけるためにも投球数がある程度かさむのもやむを得ないのかもしれない。広島のエースとして何度となくシーズン200投球回を記録した前田健太(米ツインズ)のような大エースとなることに期待。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)