最速148キロの本格派
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、高校野球だけではなく大学野球も大きな影響を受けている。
例年6月に行われている『全日本大学野球選手権』は中止となり、春のリーグ戦もほとんどの試合が行われなかった。
それでも、“運命の一日”は刻一刻と近づいて来ている。プロの舞台を目指す4年生にとっては秋のリーグ戦が最後のアピールの場になるが、プロアマ野球研究所(PABBlab)では、そんな中で活躍が光った選手について積極的に紹介していきたい。
今回は、関甲新学生リーグに突如出現した“本格派右腕”を取り上げる。
定期的に好投手を輩出
関甲新学生野球連盟に所属している平成国際大。2003年秋のリーグ戦で一度優勝こそ果たしているものの、上武大や白鴎大の後塵を拝することが多く、全国大会への出場経験はない。
だが、過去を振り返ってみると、2003年に自由枠でプロ入りした山崎敏(元西武)を皮切りに、平野将光(元西武)や牧田和久(現・楽天)、佐野泰雄(現・西武)と、定期的に好投手を輩出している。
そんな平成国際大に、またひとり注目を集める投手が登場。それが清水陽介だ。
清水は伊勢崎清明時代から控え投手で、大学進学後も昨年までリーグ戦での登板機会はなかった。
地方の大学リーグでは、実績のない4年生は春のシーズンを最後に引退することも多いが、清水は8月に行われた関甲新学生リーグのエキシビショントーナメントで好投。8月15日に行われた上武大Bチームとの試合でもそのピッチングを見たが、7回をわずか被安打2の失点1。控え選手相手には格の違いを見せつけている。
そんな清水の実力を確かめるべく、秋季リーグ戦の開幕戦となった山梨学院戦を訪れた。
力で圧倒できるパワーピッチャー
この日も、清水は期待通りの快投を見せる。
立ち上がりの先頭打者に内野安打で出塁を許したものの、後続を抑えて無失点で切り抜けると、2回以降も安定したピッチングを披露。味方の援護がなく同点で降板したため、勝利投手とはならなかったが、6回を投げて4安打で1失点。しっかりと試合を作り、チームの開幕戦勝利に大きく貢献した。
185センチ・94キロという、大学生の中でも一際目立つ堂々とした体格を生かしたパワーピッチングが持ち味で、自慢のストレートは最速148キロをマーク。アベレージのスピードも高く、降板した6回まで毎回145キロを超える数字を叩き出していた。
特筆すべきはストレートの割合の多さである。変化球はスライダーとカーブがあったが、両方合わせても投じたのは10球未満であり、終始球威で打者を圧倒し続けたのだ。
いくら145キロ以上のスピードがあるとはいえ、大学の一部リーグでこれだけストレートで押せるというのは、数字以上の威力がある証拠である。
少しテイクバックで体をひねり、上半身が強いフォームは、かつて阪神が誇った勝利の方程式「JFK」の一角として活躍した、久保田智之(元阪神)と重なる。
投げ終わった後に一塁側に体が流れるため、バランスの良さはもうひとつという印象だが、指先の感覚は悪くなく、ストレートに関しては制球も及第点。右打者の内角には少しシュートして、左打者の内角には少しスライドする球筋も打者にとっては厄介だ。
この日は先発で好投したが、タイプとしてはフォームのところでも触れた久保田と同様に、短いイニングを球威で圧倒するリリーフが向いているように見える。
抜けることが多いスライダーと、少し変化の早いフォークボールがレベルアップすれば、ストレートがさらに生きてくることは間違いないだろう。
ちなみに、この日は午後から東京ドームで「プロ志望高校生合同練習会」が行われるにもかかわらず、3球団のスカウトがその前のわずかな時間を縫って視察に訪れていた。それだけで清水に対する注目度が上がっていることがよく分かるだろう。
大学3年まで全く実績のなかった投手が、この時期に浮上してくることはなかなかないこと。既にプロ志望届も提出しているが、この日のような投球を続けていれば、一気にプロ入りという可能性も出てくるはずだ。
関甲新学生に突如出現した剛腕の今後の投球に、ぜひ注目してもらいたい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所