コラム 2020.09.28. 22:00

3000勝ライオンズ、栄光の先に求められるもの【白球つれづれ】

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本拠地移転後3000勝を達成し、記念のボードを掲げる西武・辻監督=メットライフドーム

白球つれづれ2020~第39回・西武ライオンズ


 埼玉西武ライオンズが通算3000勝を記録した。

 9月23日に本拠地・メットライフドームで行われた日本ハム戦。今季の苦闘を象徴するように先発メンバーから不振の山川穂高、森友哉の両主軸が外れる苦心のオーダーだったが伏兵の木村文紀選手が4打点、ルーキーの柘植世那捕手が決勝打と気を吐いて逆転勝利に結びつけた。

 「選手、監督として何勝関わっているかわからんけど、3000ってすごいなと。これから4000、5000と永遠に強いチームであってくれたらいいなと思います」。指揮官・辻発彦も記念すべき区切りの勝利に安堵の色を浮かべた。

 1979年、福岡に本拠地を置くクラウンライターから球団を譲渡。埼玉・所沢に移転してから41年目、西武として3000勝2466敗186分けの戦績を残す。(23日時点、以下同じ)ちなみに同年以降で3000勝を記録しているのは巨人の3052勝だけ。この期間だけを見れば「球界の盟主」とほぼ肩を並べる数字だから立派だ。

 埼玉に初のプロ球団として産声を上げた当初はドタバタの連続。話題作りも兼ねて田淵幸一、野村克也、山崎裕之らのベテラン人気選手を獲得したが、福岡からの残留組に新人たちも加わり、文字通りの寄せ集め軍団だった。

 伊豆の下田で行われた春季キャンプは陸上競技場。第2次キャンプは米国のブラデントンに渡ったが、メジャーリーガーたちが集まってくると追い出される形になって練習環境は劣悪だったという。根本陸夫監督率いる1年目は45勝73敗12分けで断トツの最下位に終わっている。


管理野球から黄金期へ


 チームが一気に生まれ変わったのは4年後に広岡達朗監督が就任してからである。キャンプから禁酒禁煙、食事面でも玄米、豆乳や自然食主体に切り替える。勝利への意識が希薄とみれば徹底した基礎の反復練習と管理野球を課した。

 後に鬼の広岡が痛風に悩んでいたことが発覚。ベテランを中心に「何が玄米だ」と反旗をひるがえす空気も漂ったが、この反骨心が最後には初優勝の原動力になった。一度、勝利の美酒と勝つための方程式を学べば「勝者のマインド」も手に入れられる。そこへ、石毛宏典、辻発彦、工藤公康、渡辺久信らの新戦力が加わり、森祇晶監督時代の黄金期となって結実した。

 86年から94年までの9年間で8度のリーグ優勝に6度の日本一。森時代の西武は川上巨人のV9時代とよく比較される。どちらが史上最強のチームだったか? 時代も違えば対戦相手も違うため答えを出すのは難しい。

 だだ、ひとつ言えるのはV9巨人の頭脳は長嶋茂雄や王貞治両監督より、広岡、森に継承されたと見るべきだろう。不世出の天才打者だったONよりも戦術、戦略面では後者の方が学んだことは多かった。現在、12球団の多くの監督、コーチは西武OBが占めている。今や西武は多くの人材を輩出する名門球団となった。


次なる西武の黄金期へ


 強豪軍団を語る時、ドラフトにも触れるべきだろう。特に85年の清原和博、99年の松坂大輔は記憶にも記録にも残る名選手だ。共にドラフト1位で他球団との競合を制して獲得。人気面でも全国区に押し上げた功績は大きい。

 そんな西武も直近の10年を見ると苦戦が続いている。辻監督が就任以降、昨年、一昨年とリーグ連覇は果たしたがクライマックスシリーズではソフトバンクに苦杯、日本一は08年以降遠ざかっている。

 かつて、95~96年にかけて秋山幸二、石毛宏典、工藤公康らがダイエーに移籍。清原和博も巨人に移っていった。その後も2000年代に入ると松坂大輔、松井稼頭央や中島宏之らがメジャーに挑戦。さらに近年では涌井秀章、岸孝之投手に浅村栄斗、炭谷銀仁朗選手らのFA移籍、菊池雄星投手と秋山翔吾選手の海外組と主力の人材流失が止まらない。過去にはそのたびに若手の台頭で弱体化を防いできたが、それにも限度がある。

 今季のペナント模様を見てもパ・リーグではソフトバンクに次いでオフに積極補強に動いたロッテと楽天が上位にいる。セ・リーグ独走の巨人を見てもトレード、FAと育成の両面でどん欲な強化を進める。人材の流失にそろそろ歯止めをかけなければ次なる西武の黄金期も見えてこない。

 新しい練習場と合宿所を建設、メットライフドームのボールパーク化も推進している。今季は1951年に前身である西鉄ライオンズから数えて70年目の特別なシーズンだ。区切りの年だからこそ、過去を洗い出して近未来のチーム作りをもう一度、考える時期に来ているのではないだろうか?


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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